第24章 神隠しと云う名の
状況が判らずジタバタするも一瞬だった。
「んっ」
相手が兄だと判ると大人しくなる。
ポカンとした顔で見ている連中。
漸く太宰が紬を解放した。
「どんな状況?」
「最悪な状況だよ」
紬を降ろして後ろから抱き締める。
「説明して中也」
「見たら判んだろ」
中也の言葉にキョロキョロする紬。
「ああ。中也のせいか」
「判ったなら良いよ。戻ったらきっちりお仕置きするから」
紬から離れて固まった連中に触れた太宰。
「「!?」」
急に動ける様に為る男。
続いて軟派男に向かうも
「がぁっ!」
触れずに蹴りを入れる。
「2つ聞いていい?」
ぐっ……と蹲りながら太宰を見上げる。
「ここ1ヶ月で居なくなった人間は何処に?」
『探偵社』の太宰とは思えない程の冷たい笑み。
「……男はパーツに……女は身体で金を稼がせてる」
「紬も同じ目に遭わせる積もり?」
男達が拳銃を太宰に向けるも素早く紬が男達に触れる。
「今動ける様になったのに馬鹿だねぇ」
が。
一人間に合わなかった。
バァン!
「!」
しかし、太宰の後ろにいつの間にか居た中也に止められる。
「これは俺の獲物だ。手前等は去れ」
「……。」
中也がそう云うと太宰は黙って踵を返し、紬の手を取る。
「紬帰るよ」
「ん」
そう云うと2人で歩き出す。
「ちょっと待ちなさいよー!」
「○○はいいわけー!?」
□□と■■が叫ぶ。
バキィッ
地面に亀裂が入る。
「静かにしろ。手前等から始末されたいのか」
「「ヒィ」」
怯えて腰を抜かす。
主犯の男がこの隙に後退りする。
此方も完全に腰を抜かしていた。
その辺の岩を軽々と持ち上げて男に歩み寄る。
「なっ……あ…」
声すら発することが出来ない。
必死に後退りして進むが無意味だ。
コロン
その時、男のポケットから蜻蛉玉が転がる。
それを見てニヤリと笑う中也。
「良かったなお前」
「?」
紅い花が描かれた蜻蛉玉。
「紬は赤が苦手なんだよ」
呟きと同時に手を降ろした。
悲痛な叫び声は一切聞こえなかったが、何故かパリンと硝子が砕ける音は響いたのだった―――