第24章 神隠しと云う名の
「いやー助かったよ中也」
「面倒なヤツに眼ぇ付けられるのは手前も同じだな」
「おや。治だけじゃなかったのか」
「自覚ねーのかよ」
溜め息を着く。
「あの男で間違いないのかい?」
「ああ」
「ところで何でこんなところに?」
「エリス嬢が硝子細工のオルゴールをご所望だとよ」
「マフィアの幹部も大変だねぇ」
ケラケラ笑って先程の硝子細工屋に向かう。
中也が中に入る。
紬も先程見ていた蜻蛉玉を見る。
「あ、無い」
「ああ?」
硝子細工のオルゴールを手にして中也が戻ってくる。
「此処に1つだけ白い花の描かれた蜻蛉玉が在ったんだけど」
「何でその時買わなかったんだよ」
「治と出掛けるまで楽しみを取っておいたのだよ」
「訊くんじゃ無かった」
うんざりした顔で会計に行く中也。
紬も何かを手にしてやって来る。
「結局、黒にするのかよ」
「黒もこれ1つしか無いし、これは治のだよ」
「あー。白は先刻、売れてしまいました」
「そうなんですね」
商品を受け取って仕舞う。
「貴女は先刻もきてたでしょ?」
「おや。覚えてましたか」
「こんな別嬪さん忘れるわけないですよ!」
「お上手ですねぇー。お姉さんには負けますよ」
ケラケラ笑い合う2人。
「貴女の後に来た甘い笑顔を振り撒く、如何にもモテ男って人が買っていったの。誰かへのプレゼントかも」
「そうなんですねー残念」
―――
「有難う中也」
「礼を云われることなんざしてねーよ」
「ふふっ」
外方向く中也に笑う。
こうして旅館の入り口で別れたのだった。
時刻は間もなく午後4時を終わろうとしていた。
「治は?」
部屋に戻ると国木田と敦が迎える。
「未だ帰ってきません」
「何処に行ったんだい?」
「鍾乳洞に行ったんだが……何か見付けたのか?」
「それなら連絡の1つくらい寄越すだろう」
荷物を置いて携帯電話を取り出す。
それと同時に告げる着信―――
「あ、治からだ」
「どうせ川に飛び込んだとかだろう」
「あはは」
国木田達の会話をバックに紬が電話に出ている。
ピッ
「国木田君の云う通り、川に飛び込んだ報告だった」
やれやれと溜め息を着く。
携帯電話だけを持ってそのままUターンする紬