第24章 神隠しと云う名の
「太宰さん達は今からどちらに?」
「国木田君は職場の同僚にお土産を買うんだろう?」
「え?ああ。そうだ」
一瞬で目配せを終わらせる。
恐らく、太宰は何か掴んでいるのだろう。
国木田が太宰に合わせる。
「私は鍾乳洞を観に行くところだけど」
「丁度良かったー!私達、昨日鍾乳洞行っちゃったけど○○は未だだから行きたいって云ってたんですよー!一緒に連れてってくれませんー?」
「構わないよ」
太宰がニッコリ笑うと○○も笑顔を浮かべる。
「強面のお兄さんは私達と買い物を楽しみましょー!」
「は?えっ……ちょっ!おい!」
2人に腕をとられてズルズルと引き摺られていく国木田を愉快そうに笑って見届ける太宰。
「じゃあ行こっか」
「はいっ」
二人も歩き出したのだった。
―――
「思っていたよりも広いねえ」
「なんか、こう。神秘的すぎて圧倒されますね」
キョロキョロしながら歩く2人。
祠の在るところまでが観光用の通路になっているらしい。
「にしても何故か視線を矢鱈感じるのだが」
「あはははは……」
通り過ぎ様、後ろから、前からだって振り返ってまで紬を視る男ばかりだ。
「何処か可笑しいかい?」
「いや、全く」
視られている理由が判ってない紬に苦笑するしかない敦。
隣に居るのが僕だしな……視線が痛い!
カップルばかりの中なので端から見たら紬と恋人同士と思われているのであろう。
故に敦に刺さるのは羨望の眼差しだ。
暫く歩いて漸く祠の在るところに着く。
「此れが有名な祠ね。でも何故、駆け落ちの聖地と呼ばれるんだ?」
「何でですかね?」
「昔、村娘を恋してしまった殿様が娘の手を引いてこの鍾乳洞に入ったそうだよ」
「へぇー。そんな逸話が」
答えた男は勿論、件の男。
「興味あるの?」
「勿論。それを調べるために此処に来たようなものだから」
「そうなんだ。僕は此処が地元で民俗学を研究しているから役に立つと思うけど」
「へぇー意外だねぇ」
「どうだい?食事をしながら」
「………。」
紬がフムッと考える。
そして
「敦君。国木田君はきっとお土産を買っている頃だ。此処を出たら手伝ってきてくれるかい?」
「分かりました」
こうして手筈を整えて外に出た。