第24章 神隠しと云う名の
「昨日、君と一緒に居た男もあまり変わらない感じだったけど」
ピクッ
男の発言に歩みを止める。
「君は私の兄を愚弄する気かい?」
「!」
昨日、太宰に向けられたのと同じ眼。
「兄妹だったのか……道理で警戒されるわけだ」
「判ったら他の女を口説く事だね」
「お待たせしましたー」
そんな険悪な雰囲気の所に敦が戻ってくる。
「早かったね。良いモノが見付かったかい?」
何時も通りの紬。
「はい」
「じゃあ行こうか」
「紬さんは良かったんですか?蜻蛉玉」
「良いよ。またゆっくり観てまわる心算だから」
「そうですかー売り切れてないと良いですね」
「そうだねー」
そう云いながら店を出ていった。
「ガードが固いなあ」
そう呟いて、先程紬が手を伸ばそうとしていたモノを掴む。
「でも案外、ああいう女の方が直ぐに落ちる」
ニヤッと笑って会計を済ませた。
―――
「あ~~~~~遣る気でない~~」
「五月蠅い!その口、なんか咥えさせるぞ」
国木田は紬と別れてからずっとこの調子の太宰に2時間弱、ツッコミを入れ続けていた。
国木田が聴き込みをしている間もぼやいてばかりで一切仕事をしない太宰。
そんな太宰がとある店前で立ち止まる。
「国木田君。お金かして」
「はあ?財布はどうした」
「真面目に仕事しないかもしれないからって紬が持ってる」
「ホント、お前と違ってそういう所はしっかりしてるな」
「自慢の相方だからねえ」
国木田から千円借りて、選ぶことなどせずに商品を取って会計に持っていく。
国木田も続く。
レジ奥の壁に飾ってあるのは『鍾乳洞の写真』。
此れに気付いたのか。
幾ら遣る気が無いとは云え、太宰の観察眼に感心する国木田。
「此れが縁結びで有名な鍾乳洞ですか?」
会計をしながら、齢70は過ぎているだろう老婆に話し掛ける。
「縁結びなんてとんでもない」
老婆は顔をしかめる。
「私は大学で古より伝わる伝記などを専攻してまして今はこの土地の『神隠し』伝説を調べているのですがよろしければ詳しく教えて頂けませんか?」
「若いのに関心じゃ。しかし、今や鍾乳洞は観光の目玉。悪評が流れれば私等は食べていけん」