第24章 神隠しと云う名の
「何で早く云ってくれなかったの?真逆、私に隠れて会う気だった訳じゃ無いよね?」
「話す間もない程に2人になった瞬間、襲ってきたのはどっちだい?」
「……私だね」
「……。」
何時も通りの兄妹喧嘩。
太宰の返しに中也も呆れている。
「で?何でこんなところに居るの?中也」
「ケッ。教えるかよ」
太宰の質問に外方向く中也。
「今度はヤクをとある組織が横流されてこの界隈に蔓延させてしまったらしいじゃあないか」
「何でその事を知ってんだよ!」
紬の一言に思わず怒鳴る中也。
「だって。治」
「成る程。読めてきたよ」
紬の頭を撫でながら太宰が溜め息を着く。
「治。先に上がる」
「ん」
紬は湯船から出ると女湯に入っていった。
「漸く自覚したのか、アイツ」
「お陰様でねえ」
紬を見送った太宰に中也が話し掛ける。
「で?」
「あ?」
「ヤクの件。詳しく教えてよ」
「何で手前に教えなきゃならねーんだよ」
「見たでしょ。紬の裸」
「見てねーよ!大体、手前がアイツにもっと恥じらいを仕込んどきゃあ鉢合せすることなんざ無かっただろうが!」
「その点は本当に反省しているとも」
はぁと息を吐く。
紬は知っていたのだ。
中也を見掛けたってことはこの旅館に泊まっていると云うことも。
人目を避けた時間帯に入浴に来るだろうと云うことも。
「それでも私と一緒に温泉に浸かりたいなんて可愛いだろう?」
「惚気てんじゃねぇよ」
舌打ちしながら視線を明後日の方向に向ける。
やや間があって。
「裏切り者が出た」
「頭軽そうな女?チャラついた男?」
「男の方だ」
「そう。もう少し脅かせば良かった」
「ああ?もう対面済みかよ」
「紬にちょっかい掛けてたからね」
「ホント馬鹿な奴だな」
中也は呆れている。
依りによって太宰兄妹に手を出すとは。
本当に太宰の云う、その男が裏切り者かは知らないが恐らく間違っていないだろう。
太宰の勘は中る。
唯唯、理由はこれだけだ。
「俺の直下じゃねぇし、入って直ぐに裏切ったから裏社会に詳しくないか」
「或いは元々、諜報員だったかのどちらかか」
中也が頷く。