第24章 神隠しと云う名の
太宰の言葉どころではない。
太宰の膝の上に頭を預けている紬は頬を紅潮させており息も荒い。
「……。」
その上、服もはだけている。
どう見ても情事の後にしか見えない―――。
「だ~ざ~い~~!」
「ん?何だい?そんなに目くじら立てて」
「貴様と云う奴は人が忙し」
「戻りました!」
敦が走って入ってくる。
「大丈夫ですか!?紬さん」
「元気はないけど大丈夫かな。紬、水分だよ。自力で飲めるかい?」
「……。」
敦が渡したのはスポーツドリンク。
此処に来て紬も脱水症状を引き起こしているのではと云う結論が浮上した国木田。
太宰の呼び掛けに目を開けるも、直ぐに閉じる紬。
「仕方無い。敦君。蓋開けて」
「はい!」
敦が蓋を開けている間に紬を抱えて膝に座らせる。
「有難う」
開け終わった飲み物を受け取ると自分の口に含み
「…んっ」
無理矢理、口移しで飲ませる。
コクッ
喉が動くのを確認すると敦も安心したように息を吐いた。
同時に紬が目を開ける。
「もう一口」
「甘えん坊。偶には良いけどね」
うふふと笑うともう一回、口移しで飲ませてやる。
「敦君有難う」
「いえ。大したことなくて良かったです」
「で?国木田君、何だっけ?」
「いや、すまん。忘れてくれ」
「?」
「そう?」
国木田の返答に首を傾げる敦。
そして、それ以上何も言わない太宰は手に持っていた団扇で紬を扇いでやる。
―――
「いやー迷惑かけたね」
数十分後、紬は何時も通りに戻っていた。
「にしても何で開かなかったんでしょうね?」
「従業員が調べに行ったが鍵が壊れた形跡も無かったそうだ」
「うーん…」
紬は太宰の腕の中で考え込む。
大丈夫だと言ったのに解放する気は全く無いらしい。
敦と国木田は理由が分かっているため、この事に一切触れなかった。
「私達ならあの手の扉を細工する事なんて大したことじゃないけれど」
「それを素人が出来るかと云えば少し考えるね」
「「……。」」
物騒なことをサラリと云う太宰兄妹に言葉を失う。
「「却説、どうしたものか」」
話が行き詰まる。