第24章 神隠しと云う名の
「あれー?よく見ると一寸違うような」
「太宰さんって女の人だったんですかー?」
驚いて訊ねられた時点で紬は合点がいった。
「ああ。治に会ったことがあるのかい?」
「え?あー!もしかして妹さんですかー!?」
「うわー!そっくりですねー!ごめんなさい!失礼なことを云ってしまって!」
「ふふっ。気にしなくて良いよ」
そう云いながら風呂に入る支度をする。
はしゃぎながら3人も入浴の準備をした。
身体を洗って浴槽に浸かる4人。
「にしても本当に太宰さんとそっくりですね」
独りだけ大人しい女性、○○と名乗った女が紬に話し掛ける。
「はは。よく間違えられるんだ。二卵性とは云え双子だからね」
「えー!?双子なんですかー!?」
「だからそんなにそっくりなんですねー!」
賑やかな2人、□□と■■も盛大に驚く。
そんな中、ふふっと笑っている紬の首筋に注目する○○。
「紬さんは恋人がいらっしゃるんですね」
「ん?ああ、此れね」
視線の先に気付いて苦笑する。
「嫉妬深い恋人でねぇ。怒らせると直ぐにこんな風に意地悪するのだよ」
「わー!愛されてるって事じゃないですかー!」
「そうですよ!羨ましいー!」
「本当、羨ましいです」
「君達も充分可愛らしいけど彼氏の一人や二人居るだろう?」
「いやいやー居ないですよー」
「だから寂しく女2人旅ですからー」
あははっと笑いながら返す2人組と
「私も失恋したばかりで」
苦笑して答える○○。
「振られたのかい?」
「はい。他に好きな子が出来たって」
「そんな男は別れて正解さ」
「そうですか……?」
「浮気だけならまだしも『君をもう愛せないと告げられた』ようなものだろう?」
「!」
○○がハッと顔をあげる。
「そんな男にすがる時間の方が勿体無いさ。世界は広い。他に愛し愛される人を探した方が良いに決まっている。君が聖人君子で無償の愛を提供することを厭わないと云うなら過去にすがっていても構わないと思うけど。それか本気で略奪し直すかのどちらかだね。欲しいものならば、それこそ必死で求めなければ手には入らないさ」
「あ……」
紬の言葉に何か吹っ切れたような顔をする○○。