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【文スト】対黒

第24章 神隠しと云う名の


「此処の少し離れに鍾乳洞が在るらしいんだが、その中に祀られている神様が『縁結び』の神様らしい」

「私もその話は聞いたよ。其所が恋人の聖地らしい」

髪を弄るのに飽きたのか、そのまま紬を後ろから抱き竦める。

「治、動けない」

「寄り掛かってくれたなら抱き締めるだけにするよ」

「やれやれ」

兄に体重を掛けると満足そうに笑う太宰。

敦は仲良しですねーと笑っているが国木田は頭を抱える。


「その神様の怒りを買うと恋人達は『神隠し』に遭うらしい」


「「!」」

話が噛み合う。


「どちらか一方では無く、両方とも神隠しに会うから恋人と鍾乳洞に行く際は気を付けてねと脅されたよ」

「ここ最近で神隠しに在ったって云う話は訊かなかったか?」

「あくまで伝説だからね。本当な訳無いだろうと笑い飛ばされたよ」

「そうですよね……」

敦が苦笑する。


「観光スポットなのは確からしいから明日にでも行ってみるかい?」

兄を見上げながら云う。

「行くなら誰も居ない時間が良いなあ」

「何で?」

「邪魔されたくない」

紬の肩に頭を乗せる。
それが合図なのか撫でてやる紬。


「お前達が2人で行くと確実に神隠しに遭うな」

「「だから行くんだよ」」

「サボる気満々だろう!絶対に2人で行かせないからな!」

「「えー国木田君のけちー」」


太宰兄妹の魂胆などお見通しのようだった。


―――

食事を済ませて温泉に向かう3人。
太宰の姿だけ無い。

「太宰さん、入らないんですかねー」

「心配しなくても時間をずらして入るから気にしなくて良いよ」

「何でまた」

「包帯を巻き直さないといけないからね」

「「!」」

紬の言葉にハッとする2人。
発言した本人はニッコリ笑っているだけだ。


包帯の下は本当に傷だらけなのだろう。


先日の一件であの包帯が飾りでは無いことが薄々判った2人はこれ以上何も云わなかった。


「じゃあまた後でねー」

「ああ」

「ごゆっくりー」


別々の暖簾を潜って中に入る。

紬が中に入ると楽しそうに話している3人組が一斉に此方を向いた。

「太宰さんー!?流石に女風呂まできちゃ駄目ですよー!?」

「うん?」


突然、名指しで話し掛けられて首を捻る紬。
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