第24章 神隠しと云う名の
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部屋に戻る4人。
居間と床間が分かれている部屋のせいか、片方の部屋には既に布団が3組敷かれていた。
時刻は間もなく夜の7時を迎えようとしている。
皆にお茶を注いで口を開く紬。
「どうやら行方不明の話は大事にされていない様だね」
「何?」
「紬の方もか」
「と、云うことは治の方もか」
お茶を啜りながら太宰兄妹が何時も通りに話すも国木田の眉間には皺が寄っている。
「先月、8人が行方不明になった足取りの最期が此処だと云う情報だが」
国木田が沢山の文字の描かれた手帳の頁を見ながら云う。
「でも8人とも元々、此処の地域の方じゃ無いんでしょう?」
「ああ。どうやら旅行先が偶々此処だっただけのようだな」
「この辺に『駆け落ち』の聖地が在るらしいよ」
「は?」
紬の言葉が予想外過ぎて皆の注目が集まる。
「私の方は『カップル』の聖地が在るとは聴いたけど」
太宰兄妹の情報が始めて食い違う。
「しかし、紬が云うのが正しければ俺達が最初に立てた仮説が通るわけだ」
「そうなるねぇ。しかし、治の持ってきた情報と食い違ってる事だけが気掛かりだよ」
この8名の行方不明の依頼を持ってきたのは警察だった。
しかし、先程も太宰兄妹が話していたように表沙汰に一切なっていない。
理由は3つ
行方不明になった人間は対で。要はカップルで居なくなっているから駆け落ちの可能性が高いこと。
何れのカップルも、その片方が名家の出で、その様なことを表沙汰にされたら立場がなくなるため秘密裏に捜索したいと云ってきていること。
追っていたら偶々か。依頼のあった4組凡ての足取りが途絶えたのが此の温泉地だと云うこと。
探偵社に依頼してきた時点で警察が表立って動けない理由が在ることは判っていたものの、誰もこの事を知らないとなると地元民の聴き込みすら一切行われていない事になる。
「此の地方の伝説を調べていて神隠し伝説に行き着いたと旅館の従業員達に話を振ってみたんだけど面白い返答だったよ」
話に飽きてきたのか。
喋っている紬の後ろに座り紬の髪で遊びだす太宰。
「何て?」
しかし、誰も気にせず話を続ける。