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【文スト】対黒

第24章 神隠しと云う名の


「君みたいな美しい人ならどんな柄でも色でも綺麗に映えるだろうね」

「おや。口が上手いねえ。煽てたって何も出ないよ?」

クスッと笑って隣に来た男に返す。

「僕は思ったことを直ぐに口にしてしまうから決してお世辞じゃあないよ」

フワッと笑う男。
小洒落た格好に甘い面持ちの如何にもモテそうな男が紬に話し掛けてきたのだ。

「君、名前は?」

「太宰」

それだけ名乗ると男から浴衣に視線を戻す。

「こういう時って名前を教えてくれるもんじゃないの?」

「生憎、こういう時に遭遇した事が無いのでね」

「そうなんだ!意外だなあー。君みたいな女性、男なら絶対に放って置かないと思うけど」

「そうは云われてもねぇー」

適当に返事して浴衣を眺める紬。


「綺麗な黒髪をしているね。君にはほら。これなんか似合いそうだけど」

「黄色かー」

指されたのは黄色地の浴衣に青や赤の朝顔が描かれた浴衣。

フムと頷いて視線を男とは反対側に移す

「治は如何思う?」

「目立つから駄目」

「云うと思った」

「!?」

音も気配もなく紬の隣に立っていた太宰に気付いて驚く男。

「しかし私の意見を押し付けるのもなんだから『せーの』で指差したものを着るのは如何だろう」

「成る程ね。意味無い行動だけど?」

「勿論、私も意味無い行動だとは思ってるよ」

「?」

紬に笑顔を向けて話す。
そして、その先。

2人が何を云っているのか判らないといった顔をしている、紬の反対側の隣に位置した男を一瞥する。

ビクッ

鋭く、冷たい目で見抜かれた男は肩を少し弾ませる。

それも一瞬だった。

「敦君ー」

直ぐに何時もの太宰に戻り、敦を呼ぶ。

「わー綺麗な浴衣ですねー」

「選んで良いらしいのだよ。因みに敦君なら何れを選ぶ?」

「えぇ!?僕は着ませんよ!」

「チェッ」

「治は意地悪だねぇ。引っ掛からなかった敦君は偉いよ」

笑って云う紬。

「紬さんは何れを着ても似合いそうですね」

「ふふっ有難う」

笑顔で敦の頭を撫でる。

「敦君。『せーの』の掛け声をお願い」

「?せーの」

ピッ

敦の掛け声で同時に浴衣を指差す太宰兄妹。

「!」

指は同じ浴衣を指している。


その状況に驚く軟派男。
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