第2章 入社試験
次いで救急車も駆け付ける。
「もう大丈夫だね。」
「そうだな。」
「弾は貫通しているみたいだ。止血帯!」
救急隊がそう言った瞬間に、血が滲んできたような気がする。
「こんな大きな血管を傷付けて失血が少ないなんて……!」
撃たれた男は、慌てて処置されると救急搬送されていった。
そんな男を見送ると突然、声を掛けられる。
齡50歳程の男性店員、先程紬と話していた店員だ。
「有難うございました!本当に、なんとお礼を云って良いのか。」
「いえいえ。ご協力感謝します、支店長さん。」
「は?」
笑顔で話し掛けてきた男に対してお礼を云う紬。
「私が金庫を開けてみせてしまったので、速やかに電子ロックの番号は変えてくださいね。」
「はい。」
「おい、どういうことだ?」
支店長は撃たれた男だったんじゃ?
「支店長さんに協力してもらってね。電子ロックのパスワードと名札を借りたのだよ。」
「……。」
と云うことは。
あの時点で既に金庫が空かないことを想定してパスを聞いていたのか。
「あ、そうだった。」
誰かを探しだす。
そして、見付けたのか。その人物に歩み寄る紬。
「これ、お返ししますね。有難うございます。」
「あ、いえいえ。こんなものでも役に立てたなら……此方こそ本当に有難うございます。」
そう言いながら返却したのは通帳。名義が○○○○となっていた。
「………。」
笑顔で手を振り別れを告げると国木田の元へ戻ってくる。
「通帳くらい俺が……」
「『武装探偵社』名義のなんか使ったら私のハッタリが凡て嘘だとバレてしまうではないか。」
「……。」
それもそうだ。
あれだけ疑っていた男だ。間違いなく不信におもうだろう。
この解決までの過程を一瞬で組み立てたと云うのか?
国木田は何も云うことが出来なかった。
ハッタリを通す度胸も演技力も
ハッタリを信じ込ませる知識も説得力も
全て、素人の出来るものでは無かった。
「国木田さん!太宰さん!」
「「!」」
谷崎が太宰と共に駆け付ける。
「大丈夫ですか!?何やら昼間なのにシャッターが降りてる銀行があるから強盗じャあ無いかッて聞いて!」
息を切らして話す。
「ああ。今、解決したところだ。」
「矢張りそうだッたんですね!」