第2章 入社試験
「選べ。」
「え?」
「納得した。お前が人質を選べ。」
「重要な役割を!有難うございます!」
えーっと……と選び始める。
皆が一斉に紬から目を反らす。
「この人が良いですよ、ボス。」
「………こいつだけ目を反らさなかったのにか?」
紬が指差した先にいるのは勿論、国木田だ。
「恐怖体験時の人間の心理というのは、表とは裏腹な行動を取るのですよ。」
「どういうことだ?」
「子供が判らない問題を教師に当てられたくない時に、目を反らさずに、然も判っているかの様に振る舞うのと同じこと。」
紬はニッコリ笑う。
「目を反らしたと云うことは未だ正常に脳が動いている証拠。故に、この男は恐怖で頭が真っ白だから動けなかったのと同意。見た目も頭の良い、勉強は出来るタイプだ。」
「そうか。お前、来い。」
「……。」
男に言われ、ゆっくり近付く国木田。
直ぐに銃を突き付けられたため両手を挙げる。
「却説。では、電子ロックを解読しますか。」
事務所に入って手頃なパソコンをカタカタと打ち始める紬。
3人の男は外に出ている金を積め終わったのか。
金庫の前でスタンバイしている。
拳銃を持つ男は人質を注視し、その目の前に立つ国木田はパソコンに座っている紬を黙ってみている。
若し、本当にハッカーなら?
太宰も問い質す必要があるだろう。
頭痛の種にヒビが入る。
「判ったー」
「!もうか!?」
犯人、4人ともが感嘆する。
紬が席を立つ。
「!」
一瞬、目が合った。
取り敢えず、今はこの状況の解決だ。
紬がゆっくりと金庫の方へ歩んでいく。
電子ロックのパネルに12桁の数字を入れる。
ピーッ ガコンッ
「開いた!」
開いた!?
男達の注意が一気に金庫に移った。
「国木田君!」
「ああ!」
「!?」
国木田が拳銃を持つ男を取り押さえる。
他の3人が反応する。
が、遅かった。
「君達は金庫の中に納まっておいてくれ給え。」
素早く3人を押し込んで金庫を閉じる。
「離せっ!クソッ!」
「紬、通報だ。」
「了解ー。」
駆け付けた警察官により4人は逮捕され、事件は無事に解決した。