第23章 騙し、見抜かれ、騙されて
―――
紬は全く動かなかった。
「太宰避けろ!」
国木田が叫ぶ。
しかし―――
「ふふっ」
動くことをしなかった紬は笑顔を浮かべると
「必要ないよ」
土人形に触れた。
サァ――………
「「!?」」
塵になって消えていく。
「何!?」
「君、土を操れるんだねぇ」
その光景に驚き、固まっている男に近づいてぽんっと肩を叩く。
「「!」」
国木田と敦の拘束が解けた。
「国木田君!」
「『独歩吟客』!」
手帳の頁を鉄線銃に変えて、控えている後ろ二人に攻撃を仕掛ける。
その間に
―――『月下獣』
敦が太宰の傍に居た土使いを拘束した。
「お見事。やるねぇー2人とも」
パチパチと手を叩きながら笑う紬。
「くそっ!妹は『動きを停止させるだけ』じゃなかったのかよ!」
敦の拘束の元、男が暴れながら叫ぶ。
「そうだよ。『紬』は、ね」
「「!?」」
その返答の声は――
「私は太宰治、元々兄の方だからねえ」
紛れもなく兄のものだった。
「はっ……兄……だと!?」
「そ。向こう側で攻撃されている方が紬だよ。まあもう片付いてるだろうけど」
ニッコリ笑って云う太宰。
「「……。」」
敵同様に完全に唖然としている国木田と敦。
「裏をかいて奇襲するところまではいい線いっていたと思うけどね」
「……何時の間に入れ替わったんだ?」
「最初からだけど?」
さらりと云って退ける太宰。
「そんな……我々が盗聴していることも、その内容の裏をかいて準備にあたった事も、凡て最初から見抜いていたってことか……?」
「うん」
太宰の返答にガックリと力を抜く男。
それは凹むよね………
敦は少しだけ男に同情する。
そんなことお構いなしにふふっ。と笑い出す太宰。
そして
「私を欺くなら先ずは紬に取り入らなければね。紬以外に私を騙せる人間なんて居ないから」
満面の笑みで告げた。