第23章 騙し、見抜かれ、騙されて
太宰は全く動かなかった。
「ははははは!8人による四方八方からの狙撃を掻い潜れる訳…が無い……」
倒れないのだ。
「やれやれ」
そう云いながら何やら手を動かす。
「中也と違って一々叩き落とさなきゃならないのが面倒だねえ」
「……なっ………」
バラバラ
弾丸が音を立てて落ちる。
パスンッパスンッ……
それでも発砲は続く。
太宰は何事もないかのように欠伸をする始末。
どうなッてるンだ!?
自分の造り出した虚像に隠れてその様子を窺う谷崎ですら困惑している。
何の音もしなくなるまで5分弱。
「気が済んだかい?」
「「「!」」」
ケラケラと笑いながら云う太宰に動揺したのか。狙撃手の気配が漏れ始める。
「お前達は……お互いの異能を使えるのか……?!」
狙撃が無理だと判ると刃物を携えて姿を現した8人。
「あははっそんな真逆」
「「「!?」」」
笑って言って退ける声は―――
「私は太宰紬。元々、妹の方だよ」
「ーーーっ!」
男達の顔が歪んだ。
「裏をかいて奇襲するところまではいい線いっていたと思うけどね」
それでも構わないのか。男達が一斉に紬に向かう。
しかし
「ぐあっ!」
「ナイフが通らねぇ!」
結果など目に見えていた。
全員が地面に突っ伏す。
「……紬さん……?」
「何だい?谷崎君」
太宰の姿だが声は間違いなく紬のもの。
何時の間に入れ替わッたの!?
困惑している谷崎。
「何時から気付いていた!」
「『対黒』が狙われていると判った時から」
「!?」
男達が言葉を失い、紬が笑い出す。
そして
「私を欺くなら先ずは治に取り入らなければね。治以外に私を騙せる人間なんて居ないから」
満面な笑みで告げた。