第2章 入社試験
「足を洗って就職活動に勤しんだのだがね。上手く行かなかったのだよ。」
やれやれ、世知辛い世の中だねえー等と云いながら溜め息を着く。
「前職は?」
「電網破り」
「!?」
電網破り(ハッカー)だと!?
国木田の顔も歪む。
信じてはいない。然し、此処で電子ロックを開けられなければ紬を待っているのは死だけ。
「見ての通り女だから、現場には向いていなくてね。男仲間がろくな仕事もせずに分け前を取りすぎだと言い出して以来、更生する積もりだった。」
「………。」
紬の話に耳を傾け始めた男。黙って聞いている。
「でも駄目だった。世の中が腐っているからだろうね?腹癒せに政治家の汚職事件をばらまいてやったのだけれどそれで私の腹が満たされるわけではないし。」
「!」
政治家の汚職事件!
紬の実力を確信した男。
「お前、名前は?」
「私は○○ ○○。」
ニッコリ笑う。
「よし、○○。未だお前を信用した訳じゃねえ。だがお前が金庫の電子ロックを外したら望み通りに仲間に入れてやろう。」
良く見れば、そこそこ良い女だ。悪い話ではない。
男が卑下た笑みを浮かべているのが布越しでも判った。
「わあ。有難うボス。期待に添えるよう頑張るよ。」
「!」
ボスと云う響きに気分を良くする。
紬はパソコンを求めて事務所に入ろうとする。
そして、入る前に脚を止める。
銃を持った男も付いてくる。
「あ、ボス。」
「何だ?」
すっかりボス気分だ。直ぐに反応する。
「ボスが此方側に来ると人質が何を企むか判らない。」
「「「!!?」」」
紬の言葉にビクッとする人質たち。
「そうかも知れねぇが、お前を未だ信用している訳じゃねえんだよ。」
「それは当然だ。だから人質を一人、連れていくのはどうだろう?以前の職場はそうしていたよ。」
「!成程な。お前、頭良い。」
「なに、前のボスの受け売りだよ。そして、人質は女ではなく男が良い。」
「……何故だ?」
そこは素直に納得出来ないらしい。
それもそうだ。
男より女の方が弱い。
「女は思うように動かせないのだよ。恐怖のあまりに立てないものも多い。例え男でも拳銃の前では……無力だ。」
確かに。
この女が云うことは全て説得力がある……。