第23章 騙し、見抜かれ、騙されて
「それを踏まえて今からどうするか決めよう」
「「「!」」」
二人にとっては深刻な話でも無いのでサラリと本題に戻る太宰。
「敦君と谷崎君は潜入捜査だったね?」
「あ……はい」
「裏をかいたのか……夜ではなく、午前8時に取引をするそうです」
「取引現場は?」
「あっ……えっと東倉庫街の1つです」
敦が答える。
「「成る程……通勤ラッシュか」」
「「!?」」
太宰兄妹が同時に呟く。
勿論、ただ『裏をかいただけ』と思い込んでいた二人は目を見開いている。
確かに、他の倉庫街に較べると、1本、道を表に出てしまうと交通が盛んな場所に位置していた。
たった此れだけで相手の目論見を見抜く洞察眼の持主達は各々考え事をしている。
そして結論が出たのか。
各々していた考え事の筈なのに同時に顔をあげる。
「私が谷崎君と潜入捜査に行こう」
「え?」
紬の言葉に元々行く筈だった敦がポカンとする。
「敦君と国木田君は私と囮捜査だ」
「「!」」
太宰がニッコリ笑って云う。
時刻はもう間もなく午前6時を回ろうとしていた―――
―――
人が疎らに見られるようになった探偵社前の道。
立っているのは太宰、国木田、敦、それに谷崎の四人だ。
「先刻も座っていたから判ってるかもしれないけど紬、あまり調子が良くないから」
「……。」
太宰の言葉に国木田が黙り込む。
「大丈夫なンですか?」
「大丈夫。そんな大した事じゃ無いよ。あ、敦君も定位置に付き給え」
「あっ、はいっ」
太宰に云われて探偵社の入った建物の陰に移動する。
『敦君の虎眼は視程が広いから一定の距離を離れて2人の護衛を』
敦は事前打ち合わせ通りに定位置につく。
それを見届けてから、ふふっと笑うと谷崎の手を取る太宰。
「じゃあ行くよ、谷崎君」
「えェ!?ちょっ……太宰さん!?」
打ち合わせと違うンじゃ!と声を上げる谷崎をズルズル引き摺りながらまたねーとニッコリ笑いながらその場を去っていった。
「「………。」」
ポカーンとして見送る敦と国木田。
「じゃあ国木田君、行こうか」
真後ろから紬に声を掛けられて驚く国木田。
「そんなに驚かなくても」
「五月蠅い!それに!どうなってる!?」
「まあまあ。取り敢えず歩きながら、ね」