第23章 騙し、見抜かれ、騙されて
「大抵、そう云う風に分かれた組織には存在する『中立派』が生き残っていたか」
「そゆこと」
腕に包帯を巻きながら紬が太宰の言葉を肯定した。
「まあ私達の過去だ。きっちりと精算しないとね」
「やれやれ。ゆっくり休む暇もないか」
溜め息をついて靴を履く。
「少し冷えるね。大丈夫かい?」
「私はね。ブラウスじゃないから」
太宰に問われて紬が着ている服を摘まむ。
何時ものブラウスの代わりに着ているのは、少し生地の厚いハイネックの白いシャツだ。
「買い物に行きたいな。ブラウスも買わないと駄目だし」
鍵を閉めながら太宰がぼやくと
「この件を片付けたら行くかい?」
紬が鍵を受け取り訊ねる。
「行く」
太宰の回答に紬も笑顔を浮かべて、二人は歩き出す。
空は朝を告げようと色を変え始めていた―――
―――
「色々検索してみましたが『対黒』に関する情報は一切ありませン」
「此方も何も分かりませんでした」
「そうか」
谷崎と敦が国木田に報告する。
時刻は午前5時を半ば過ぎたところ。
『麻薬密売の取引現場を押さえてほしい』という別の案件に出掛けるべく支度していた谷崎・敦ペアだったが、時間が許す限り国木田のサポートに入っていた。
「もうそろそろ太宰達が来るだろう。アイツ等なら何か知って………」
真剣な顔で話し合っている3人。
そんなところに
「随分、過激なラブレターだねえ」
「私達の片方で良いと申し出てくるところあたり、私達の事を知っている人物なのだろうねえ」
暖気な声が響き渡った。
「「「!?」」」
バッ
一斉にその声の方向を向く。
「「やあ、おはよう」」
「「「………。」」」
自分の机に着席している紬とその隣で「手紙」をヒラヒラさせながら笑顔を浮かべている太宰。
何時の間に居たんだ!?
2人の頭はそんな疑問しか浮かばなかったが、国木田は違った。
「矢っ張り、お前達の事か!?此れは!」
ズカズカと歩きながら双子の傍に行く。
「うん、そうだよ」
「懐かしいねえ『対黒』だなんて」
肯定するとハッとした敦達も傍に寄る。
「なんですか?その『対黒』って」
「昔そんな風に呼ばれていた事があったのだよ」
「「!」」