第22章 2つ兄妹、違いは?
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一方、太宰は紬の云う通り、とある警察署に来ていた。
「自分でトイレも行かず、何を云っても全く反応もしなければ動くこともせずに寝そべったままだったから困ってたんです」
「そうですか。でも安心して下さい。私が話をつけましょう。どうせ強姦を依頼したって云う確固たる証拠が見当たらないから厳重注意で帰宅させるところだったのでしょう?」
「はい。男たちは頼まれたからの一点張りですが、凡ての依頼の取引内容に関しては削除されているようで……」
困ったように刑事が話す。
「此処です」
通された部屋には女が寝そべっていた。
紬が触れた後から一切、状況は変わっていない。
「あ……また漏らしてますね……せめてトイレくらい自分で行ってくれれば………」
「話をつけときますから」
太宰を案内した女の刑事は着替えを取りに離席する。
「却説…」
異能力―――『人間失格』
太宰が女に触れる。
そして直ぐに牢屋から出た。
ガシャン……
冷たい音が響いたと同時に女がガバリと動く。
「やあ気分はどうだい?」
「!太宰様!」
女が牢の外にいる太宰に気付き、近寄る。
「嗚呼……こんなに近くに太宰様がっ……って私は何故こんなところに!?まさか貴方様が!?」
「お目出度い頭をしているねぇ。呆れを通り越して感心するよ。君が居るのは警察署。勾留されているんだ」
「そんなっ………え……何これ……」
漸く、自分の置かれている状況と、又付近の違和感に気付く。
「その齢でお漏らしなんてはしたないね」
「!」
満面の笑みで太宰が云った嫌味でカッと顔を赤らめる。
「これはっ……!そうだ!あの女の仕業に違いないですわ!私がしたくてした訳じゃありません!信じて!」
「まあ、それが君の故意であれ他意であれ、私にとってはどうでも良いからね」
「!」
女の顔が怒りに変わる。
「あの女の何処が良いんですの!?太宰様に満足して頂ける女に……まだ不足と云うなら必ずなりますから!」
「君は私の片割れを侮辱するのだね」
ゾワッ
「!?」
目の前に居る男にそっくりの女が発した殺気なんかよりも、もっと禍禍しいモノが女を襲う。
「君は間もなく此処を出られる」
「!」
太宰は女に背を向ける。
「1つだけ。君に忠告しよう」