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【文スト】対黒

第2章 入社試験


「何だ!?大人しく座ってろ!」

「いや、一寸待ってくれ!頼み事があるのだよ!」

「はあ!?お前、これが見えないのか!?」

「見えるし、知っている。けれど話くらい聞いてくれ!」

紬が手を挙げた状態で男の方に近付く。
その手に持つのは1冊の通帳。

「私は転職先を探しているのだがね、断られてばかりなのだよ。」

「……はあ?」

真顔で通帳を掲げながら話始める紬に唖然とする男。

「今日、この通帳からお金を引き出せなければ実家に帰ることすら出来ない。其処でお願いだ。」

「………。」

全員が大半の予想がついた言葉を想像する。

「私が今から引き出す予定の五万円だけとっておいてくれないか?」

「巫山戯るな!」

「巫山戯てなどいない!私は頗る大真面目だ!」


馬鹿か?馬鹿なのか?

その場に居た二人を除いて全員が思う。

除かれた一人は遂に意識を失い、もう一人も頭を抱えている。

「おい。」

「あ?」

金を積めていた男が拳銃を持った男に近付き、話し掛ける。

「金庫の鍵が空かない。電子ロックが掛かっている。数字が12桁も入れられるぞ」

「そうか。」

そう云うと男が一ヶ所に集めた人間たちに銃を向ける。

「支店長はどいつだ?」

一瞬、ざわつく。

名乗り出るものは居ない……。

「おい。俺は気が長い方じゃねえ。早く云え。」

「それは出来ないだろう。」

「あ゙!?」

男は声のした方を向く。


紬…?何考えている?


拳銃も律儀に紬に向けた。

「支店長なら君が撃ってしまったせいで生死をさ迷っている。」

「何ィ!?」

男が必死に目を凝らす。

紬が云うように男の胸元の名札には『支店長』と記載があった。

「お困りのようだね」

「!?」

クスクス笑う紬に苛立ち、安全装置を外す。

「おっと。一寸待ってくれ。では、本当の交渉に入るのはどうだろう。」

「何……?」

「私が電子ロックを開けてあげよう。」

「「「!?」」」

全員が息を呑む。

「その代わり、君達の仲間に入れてもらうのはどうだろうか?」

「……へえ。出来るのか?」

「出来るとも。君達に怯えないのも前職が同業だったからだ。」

「!成程な。そういうことか。」


説得力ある言葉に男が興味を示した。
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