第22章 2つ兄妹、違いは?
「治は私に甘いから」
「………意味が全く判らない」
国木田も冷静さを取り戻す。
「私が今回のように事を起こしても何も云わずにフォローしに行くのだよ」
「お前を先に止めればいいだけの話だろう」
「私の怒りがそれで収まれば問題はないのだろうけどね。収まらなければもっと大事になることを治は知っているのだよ」
「………。」
思い返せば紬の方が攻撃的な部分が強い。
その原因に兄が絡めば尚更。
「治が居なければ私なんてとっくに刑務所の中だよ」
「……。」
そうでなくても『元マフィア』だろうが。
等とはツッコミを入れられない国木田であった。
「まっ、そうでなくても元マフィアだから捕まれば死罪だろうけどね」
「云うな!」
「あははっ」
軽い感じで話終えると目的の場所に到着したのか歩みを止める。
「此処か。あの強姦魔グループの『ボス』の潜伏先は」
「間違いないよ」
ニッコリ笑って目的地に向き直る。
古い洋館。
手入れはされていないが………
「……最近、人の出入りがあった跡はあるな」
庭の伸びた雑草が玄関までの道を覆っているが、踏みつけられた跡があった。
「行こう」
そういうと中に入っていった。
昼間なのに薄暗い廊下。
「土足で出入りしていたようだね」
紬は埃被った廊下に付いた足跡を目で追いながら小声で云う。
「にしても、だ。何故『彼女』がボスだと判った?」
「簡単なことだよ。隠し撮りしてたのさ」
「は?」
「彼等が私を襲うのを止めた瞬間にくすねていた携帯電話の録画機能を起動させてポケットに仕込んだのさ。後は打ちのめした時に其れを確認しただけ」
「……。」
サラリと云ってのけるが。
何故、集団暴行を受けている最中にその様なことを仕込む余裕があったのか。
しかも、写るかどうかは賭けの筈だ。
「リーダー格の男の胸ポケットに入っていたのだよ。カメラが上部に付いた携帯電話が」
成る程。
そこまで正確に……って
「何で俺が考えていることが判るんだ」
「国木田君、鏡あるかい?見てみると良い。顔に書いてあるよ」
「何!?」
慌ててポケットをまさぐる。
「勿論、嘘だけどね」
「………。」
こいつっ……!
段々、太宰に似てきやがった!
「元々、そっくりの筈だけどねえ。私と治」
「……。」