第22章 2つ兄妹、違いは?
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「紬、太宰は如何した」
「治なら留置所に行ってるよ」
「は?留置所?」
朝から姿の見えない太宰の行方を訊ねるも。
思わぬ返答を得て歩いていた足を止めた。
「………また何かしたのか」
「いや。今回何かしたのは私だろう?」
「………は」
ますます訳が判らない。
しかし、紬の歩みは止まらないため慌ててあとに続く国木田。
「あの女。未だ動かないだろうから」
「!」
紬のこの言葉でハッとする。
昨日、壊れた人形の様になった女。結局、警察が駆けつけた後も元に戻ることは無かった。
「私が元に戻す気が無いと告げたから、あの女に掛けた異能を治が解除しに行ったのだよ」
ため息をついて答えた。
「矢張り戻す気がなかったのか…」
「今でもないさ。あの女が再び私の前に現れたならば同じことをすると言い切れる程にね」
「何故だ」
「何故?聞かずとも分かるだろう?」
「分からないから訊いている」
頭を抱えながら紬に問う。
「治を奪うと云った。だから阻止したし、此れからも阻止する。ただそれだけだよ」
この間も云ったでしょ、と云わんばかりにアッサリと答える。
「……太宰がお前の代わりにあの女の異能を解除しに行った理由はなんだ」
「此のまま放置すれば死ぬからさ」
「!?」
一瞬で国木田の顔が歪む。
「付きっきりで面倒を看てくれる人間が居ればいいけどね。留置所にそんな人居ないだろうし拘置所に移送されれば尚更だ。あの女は感覚の凡てを私に止められている。五感だけじゃない。痛覚も空腹感も凡て、だ。食事を取ることもしなければ排泄すら出来ない、只の人形だ」
「そこまで解っていてお前はあの女の感覚を停止させたのか!?」
「勿論」
怒鳴る国木田に怯むことなくアッサリと肯定する。
国木田の全身に怒りが充満する。
が、紬の方が国木田を上回るほどの怒りを孕んでいたようだ。
「私はハッキリと告げただろう?『卑怯な手段を使って其れを阻止させて貰おう』と」
ゾワリとする程の狂気を含んだ一言。
流石の国木田も冷汗が流れる。
が、それも一瞬だった。
「それに治が直ぐに動くと分かっているからね」
息を吐きながら云った紬は何時も通りの紬だった。