第22章 2つ兄妹、違いは?
「私をつけるならせめて香水を使うのは止め給え」
「!」
女の顔がみるみる青くなる。
「でも何故依頼人って判ったんですの?」
「私が治の妹とわかった瞬間、連中は手を止めただろう?」
「はい」
「あの時男が『依頼人が依頼を取り下げた』と云って此所から出ていった。此処に監視カメラの類いは見当たらない。しかし私が嘘をついている可能性があるにも拘わらず取り下げたと云うことは」
「実際に紬を見て、私と似ていると思ったからか」
「そう。俯いていたのは何時でもリーダー格の男に指示を出せるようにだろう」
「それだけじゃ何の証拠にもならないわ!私じゃない!」
「おや。今更誤魔化す気か。別に構わないけど」
やれやれと溜め息をついて兄に寄りかかる。
太宰も其れを受け入れるように肩を抱いた。
「彼女の左耳に嵌まっている機械とリーダーの男の耳に嵌まっている機械は同じものだ。おそらく通信機だったのだろうね?」
女がビクッと反応したのが国木田は判った。
「下着姿でいるのは『依頼人を依頼人だと思わせない為のカモフラージュ』だろう。そうでもしなければ依頼人など直ぐに割れてしまうだろうからね」
「……。」
反論すらでないようであった。
「治、この女と面識があるの?」
「無いよ」
サラリと答える。
ふーんと返事すると太宰の手を抜けて女に近づく。
すると女が卑猥な声を上げ始める。
「あっ……んぅ」
「っ!?」
思わず国木田が離れる。
バッ
「!」
女が紬に向かってくる。
「妹だからって気安く太宰様にベタベタ引っ付かないでくれる!?どうせ兄妹なんて愛し合えないんだから!」
紬との間合いを詰めて、云いたいことを云いたい放題云う。
「私が治の傍に居ようとも他人に口出しされる謂れは無いよ。そんなに云うんだったら力尽くで奪ったらどうだい?」
「云われなくてもそうさせてもらうわ!百凡手段を使ってでもね!」
「そうか。では私も卑怯な手段を使って其れを阻止させて貰おう」
ニッコリ笑って手を女に向ける。
「『私は終わりを望む。故に、求めるは始まり。物語は終焉に向かうため、始まりを告げる歌を奏でた』」
「何を云ってるの?馬鹿じゃない?」
「……。」
完全に紬を馬鹿にしている女を太宰は黙って見ている。