第22章 2つ兄妹、違いは?
「私と治はあくまで対等。同じ位置に居る。結果的に相手のためになることはあっても基本的には自分勝手だ」
「……。」
確かにそう云われればそうかもしれない。
この間、太宰さんと帰ったときも思いは、した。
私なら兄様が仕事を終えるまで待って、絶対に一緒に帰宅するのに。
もし先に帰っていたとして、家事をしていなくても兄様は絶対に怒ったりしないのに。
「これが私達兄妹と君達兄妹の違いだよ」
紬は紅茶を一気に飲み干して、再度同じものを、更にケーキを注文しながら言った。
「ナオミちゃんが羨む仲とは違ったのではと思うけど、どうだい?」
「そうですわね」
「まあナオミちゃんが云うことも間違いではないのだろうけどね」
「仲が良いってことがですか?」
「うん」
新たに運ばれてきた紅茶とケーキを笑顔で受け取りながら続ける。
「私達はお互いに対等だけれど、他人と治の位置が全く違うことは間違いないよ。それは治も同じだろう。それに私達の場合は容姿も言動もそっくりに見える双子ならではの付属品が付いている。だから余計に仲良く見えるのだろうね」
砂糖とミルクを紅茶に注いで、かき混ぜる。
「納得しました。私達はこのままで大丈夫ですわ」
ニッコリ笑うナオミに紬も笑顔を向ける。
「谷崎君は、ナオミちゃんが好い人を紹介してきたらどうなるんだろうねえ」
愉しい想像になったのか。
少し声を弾ませてケーキを頬張る紬。
「私がつれてきた殿方を兄様が否定したりするわけありませんわ」
「ナオミちゃんなら?」
「勿論。兄様が選んだ方ですもの。反対はしません」
キッパリと云いながら紅茶を飲む。
そしてナオミも追加で注文を行った。
それから暫く、二人は色々な話を続けた。
ピリリリリ……
「ん?」
着信を告げる電話。紬のだ。
「出てもいい?」
「どうぞ」
ナオミが了承するとディスプレイなど確認せずに通話釦を押して耳に当てた。
「如何かしたかい?」
その様子を紅茶を飲み干しながら見る。
会話の入り口からして、彼女の兄からだろう。
何時もと変わらない声で相槌を数回打ち
「――判った。また連絡する」
通話を終えた。
「太宰さんからですか?」
「うん。ちょっと頼まれ事をね」