第22章 2つ兄妹、違いは?
「それでも齟齬は生じる。故に喧嘩の絶えない日々を過ごすことだって山のようにあるよ」
ふふっと笑いながら話す紬をナオミはマジマジと見ている。
「谷崎君と喧嘩でもしたのかい?」
「いいえ」
「だろうね。谷崎君は妹思いが強いから大抵は折れてくれるのだろう?」
「はい…」
少し顔を歪めて答えるナオミ。
「あー…成る程。それが納得いかないのか」
「!」
紬の言葉にハッとして顔をあげる。
「我が儘が凡て通る。しかし、本当は嫌々合わせてくれているのではないか」
「なんで……」
ニッコリ笑って話す紬を驚きの顔で見るナオミ。
「谷崎君の言動にナオミちゃんが満足してない時があること位は観ていたら分かるよ」
ニッコリ笑って告げる。
「兄様は優しい。でも時々、不安になることがあるんですの」
ポツリと云うナオミの言葉を、少し温くなった紅茶を含みながら聴いている。
「大事にされてないとでも?」
「そんなこと微塵にも思いませんわ!でもっ……」
ギュゥ
スカートを強く握りしめる。
「大事にされていると判っている分、不安になるんですの」
「……。」
兄妹が故に、か。
しかし、この兄妹は私達と違って――……
「確かに、私の目からすれば谷崎君のナオミちゃんに対する扱いは『妹』と云う域を遥かに凌いでいるように見える」
「え……?妹じゃなければ何だと?」
「うーん。喩えるなら神様仏様かな」
「え……」
突然の話についていけない様子のナオミだが紬はお構いなしに続ける。
「谷崎君にとってナオミちゃんは絶対的な位置づけにあるのだと見受けられる」
「……。」
「だからナオミちゃんがしたいことは何でも叶えてあげたいと思うのだろう」
「それは私も同じですわ。兄様の望みは何でもきいてあげたい。紬さんは違うんですの?」
「違うよ」
「え」
肯定的な言葉を告げると思っていたのに。