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【文スト】対黒

第22章 2つ兄妹、違いは?


「それで?」

食事と話と。
両方を再開する太宰。

「強姦している映像をその恋人なり夫なりに送り付けて『怨み』を晴らしてあげるらしい。そうなると依頼人は二股を掛けられて棄てられた女か、或いはその女に怨恨がある人間に絞られるだろうね」

「質が悪いね」

「そうだね。しかも、依頼は女性限定を唱っているらしくて、若者の中で有名な噂になっているそうだよ。噂ゆえに本当かどうかは定かではないらしいがね」

「ふーん」

「でも9割方、本当だろうね」

「理由は」

「話を聞く限りではそこそこ具体的な話だった。後は女の勘かな」

「ふーん。まあ紬の勘は中るからね」

湯飲みに手を伸ばして口をつける。


「その映像を観て、責任をとると云う男は何人いるんだろうねえ」

「まあ強姦しているのはその男ではないし、強姦魔の連中も依頼人を吐いたりはしないだろうから、被害届を出さないならね。表沙汰になっていないと云うことは単なる噂だったのか、或いは泣き寝入りか」


ご馳走さま。そう云うと食器を片付け始める紬。
少し後に太宰も済ませて流しまで食器を運ぶ。


「風呂沸いてるよ」

「一緒に入る」

「治と入るとゆっくり入れない」

「ゆっくり入ったところで、また入り直すことになるのにね」

そう云うと風呂場に向かった。


視線を兄から食器に移して片付けを続ける。

先程ハッキリと云いはしなかったが、要は太宰に言い寄ってきていた女達すべてを太宰に成り済まして切り捨ててきたのだ。
『怨み屋』の情報など、只の副産物に過ぎない。


恐らく、『怨み屋』の話よりも訊きたいのは此方の話であろう。


「もう少し怒ると思っていたけれど」

キュッ
食器を洗い終わり、水を止めて向かうは風呂場。


先に入っている兄に続くように入っていく。


「ゆっくり入れないよ?」

「まあ勝手に女を捨ててきてるからね」

「ふーん」

掛け湯をしてバスタブに入ると引き寄せられる

「思っていたより怒ってないね」

「怒る?真逆」

紬の身体に触れながら笑顔を浮かべる。


「私を独占する気になったのだろう?」

「………。」


紬が小さく頷くのを確認すると、太宰は紬の首筋に口付けを落とした。


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