第22章 2つ兄妹、違いは?
ニッコリ笑って答えると下宿先に到着する。
「ではまた」
「お休みなさい」
会釈してからナオミは部屋に入っていった。
笑顔で手を振って
「………。」
ふと真顔に戻る。
途中から視線を感じていたが………
辺りを見るが判らない。
目的は私か、それともナオミちゃんか。
やれやれと云わんばかりに溜め息をつく。
もう少し泳がせるか。
そう結論付けて、尾行を撒くために歩き出した。
―――
「おかえり」
「ただいま」
暫く歩いた末に家に帰る太宰。勿論、迎えるのは愛しの妹だ。
「遅かったね」
「ちょっと散歩してきたから」
「ふーん」
そう云うと兄の外套を受け取ってハンガーに掛ける。
「ここ数日」
「ん?」
その外套を壁に掛けると紬が続ける。
「ずっと誰かにつけられてる」
「紬もか」
散歩と云っただけで尾行を撒いてきた事すら悟る程に感覚を共有しているだけあって、太宰も驚くことなく話を続ける。
茶の間に腰をおろすと紬が食事を運ぶ。
「女で素人、と云うより一般人」
「へぇー」
「治とこの間、一緒に外食してからだ」
「そんなに前からか」
頂きますといってから食事をし始める。
「目的は?」
「私が気付いて治が知らなかったのならば私に用事なのだろう」
「成る程。そう云われればナオミちゃんと別れてからは居なくなった」
「この手の女にモテるね、相変わらず」
「此ればかりは私のせいではないよ」
困ったように云う兄をクスクス笑いながら見る紬。
「最近『怨み屋』と云う連中が、女性を強姦してまわっているらしい」
「どこ情報?」
「治の女達からの情報」
「……。」
思わず箸が止まる。
「治が如何にも好きそうな大人しくて、正に大和撫子みたいな女性に至っては『太宰様の事は愛しておりますが他にも貴方様を愛している方々が居ることを私は存じ上げております』って云っていたからハッキリと別れを告げておいたよ」
「……そうですか」
「その他にも沢山居た数人の女が『怨み屋』の事を云っていてね」
「それを口実に全員片付けてきたわけね」
「おや?顔が暗いけど」
「真逆。紬の気のせいだとも」
「それなら良かった」
満面な笑みを向けて云う紬。