第22章 2つ兄妹、違いは?
「ふぁー……疲れた」
暗い夜道を欠伸しながら歩く男が一人。
街灯で照らされた男は砂色のコートを羽織り、彼方此方に包帯が見える。
「太宰さんー」
「うん?」
後方から女性の声がして、太宰と呼ばれた男は立ち止まった。
「ナオミちゃん」
「今晩わ」
声を掛けた女性…否、学生服を纏った女子は太宰の元に駆け寄り挨拶をする。
「こんな遅くまで学校かい?」
「ええ。学校行事の都合で」
「成る程。学生さんは大変だねえ」
そんな会話をしながら歩き始める。
「今日は紬さんと一緒じゃないんですね」
「紬は何時も通り、私を置いて先に帰ってしまったよ」
「太宰さんと違って仕事が速いですものね」
「私だって、その気になれば一瞬さ。その気にならないだけで」
「でもその気になったから今は帰れてるのでしょう?何時もその切っ掛けを意識すればその気になれるのでは?」
「それは無理な話だね。紬が私を置いて帰った時点でしか、その気にならないから」
「一緒に帰りたいとは思わないんですの?」
「外食するときだけだね。そのほかの時は一緒に帰ったら何もしないでゴロゴロするから怒らせてしまう」
ふふっと笑いながら話す太宰に苦笑する。
「紬さんも大変ですね」
「谷崎くんみたいに良い兄じゃあ無いからね」
「一度、紬さんとゆっくりお話したいですわ」
「誘ったら?断ったりはしないよ」
「……。」
自分のことではないのに、ハッキリと断定する太宰をポカンとした顔でみるナオミ。
「如何かしたかい?」
「いえ……紬さんのことなのに太宰さんがハッキリと断らないって云ったから吃驚して」
「ああ。私が嫌では無いことを紬が嫌に思うことは無いよ」
「……。」
何事でもないかの様に話す太宰に何か思うことでもあったのか。
口を閉ざして考え込んでいるナオミ。
「兄妹と云えど考え方までは違うでしょう?」
「細部までみれば全く違う事も多々あるけれど結果だけみれば常に同じだ。違えたことは一度しかない。これもつい先日解決したけれど」
「一度……」
ポツリと云うナオミを見て笑う。
「まあ、ナオミちゃんが時間あるときに声を掛けると良いよ」
「有難うございます。そうしてみます」