第21章 縺れた糸が解ける時
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食事を取って家へ戻ってきた二人。
お茶を飲みながら
「治」
「ん?何だい?」
兄に話しかける紬。
「治と噛み合わなくなってきている理由が今日判ったよ」
「ふーん」
コトリと湯呑みを机に置く太宰。
「私はもう異能を制御出来る」
「知ってるよ。ていうかもう随分前の話でしょ?それ」
「そうだよ。だから治がずっと傍に居る必要は無くなった」
「は?」
何を言い出すことやら。
そう言わんばかりに紬を自分の腕の中に引き寄せる。
「……真逆、それをずっと心配してたの?」
「あまり自覚はしてないけれど、頭の片隅には何時もある」
「……。」
「私は離れたくない」
そう云うと太宰の方を向いて抱き締めた。
「離れたくなどないのだよ治。だから治の云うことには従うし反抗しない」
そんな紬を抱き締め返す。
「私が紬を解放するわけないだろう?」
「だけど最近、怒っている理由が理解できない…要らないと告げられる事しか頭に無いのだよ………」
「……はあ。」
大袈裟にため息をつく。
「?」
「いい加減、他の男に嫉妬してるって気付いてくれないかな?」
「嫉妬?何で?傍に居るでしょ?」
顔をあげた紬の頬に手を当てる。
「紬と一緒だよ。私の『異能』が必要無い程、他の人間に触れても殺さなくなった……誰の元にでも行ける。中也のとこだって」
「……。」
「紬が私を『兄』としてではなく『男』としてみる気が無い以上、拘束する術がない」
「!」
ああ……そうか。
不安定な関係のせいで噛み合わなくなってきていたのか。
「……治にとって私は何だい?」
「大切な妹で、大切な女性だよ」
「……そうか」
私には後者が欠けていた。
何も云わずとも治は傍に居てくれるものだと思っていたから。
それなのに何処かで『不必要』とされるのではないかと云う考えが頭から離れないでいた。
兄妹が故に。
それは兄の方も同じだったのだ。
『兎に角、私は他の男と触れ合うどころか二人で出歩くのさえ認めないから』
何時ぞやに太宰が云い放った理由も今なら理解できる。