第21章 縺れた糸が解ける時
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「大丈夫?貧血が酷いなら肉とかの方が良いかな?」
「そんなに重たいものを食べる気にはなれないよ」
道中でのんびりと会話をする太宰兄妹。
何を食べるか悩んでいるらしい。
「何時から気付いてたんだい?」
「ん?家を出て三時間くらい後かな」
「流石にカメラまで仕込まれてるんじゃないか疑うレベルだよ」
呆れながら兄に云う。
「私が紬の変化を見落とすわけ無いだろう?紬が私の不具合を見落とさないのと同じ様に」
「それもそうか」
ふふっと笑いながら答える太宰にアッサリと納得する。
「でも良かったのかい?」
「何が?」
「与謝野先生だけとお話する積もりだったのに、隣に先客が居たようだけど」
「ああ」
まあ、調査員だったら誰に聴かれようと大した問題では無いだろうけど、事務員だったならば?
流石に此れを許容出来るかと問えば否だろう。
紬は勿論、隣に誰か居ることを判った上で与謝野と話を始めた。
前者だと。
『誰か』を確信していたからだ。
「国木田君にもお知らせしておかないと、ね」
ニッコリ笑って云う太宰。
国木田君に一服盛って医務室にやったか。
兄の行動を予想して溜め息を着く紬。
「国木田君の事だから卒倒してると思うけど」
「国木田君が隣に居ると判ってて話をしたのは紬だろう?私は紬が与謝野先生と話した内容の細部までは知らないから、今ごろ卒倒してると云うならばそうなる程の内容を『故意に話した』としか思わないよ」
「おや。それは私が悪い事になるね」
兄に言い負かされる。
「態とだろう?」
「態とだよ」
問われてハッキリと答える紬。
太宰は正しい。
紬は国木田が起きていて、且つ話を聞かないように努力している事も知っていた。
それでも続けたのだ。
兄と関係を持っていると云うこと国木田に知らしめる為に。
「何故?」
「おや。判らないのかい?珍しい」
「面白半分なのは判ってるよ」
クスクス笑って云う紬に少しムッとする。
「教えない。考えて」
「あっそ。云われずともそうするさ」
プイッと子供のように顔を背ける太宰。
その様を見て
国木田君も中也と同じで心配の種なのだろう?
心で呟いて、笑った。