第21章 縺れた糸が解ける時
「他人の気分を害す恐れが十分ある話を、私一人の判断で決めるべきでないことは判っているんです。それを私が違えたと云うのに怒ってないと告げたってことは……」
「……最初からそうなることを予測していた、或いはそうなるように仕向けたの、どちらかッてワケかい」
「「その通りです」」
双子の声が重なった。
「まあ私達は別に隠している訳でもなければ、他人に咎められようと気に留める積もりは一切ないですけどね」
兄がふうっと息を吐きながら云う。
「しかし。矢張り、社会と云う組織で生きる以上は『世間体』と云う言葉は常に付き纏う。私は治に居心地の悪い思いをさせる気は無いけれど……流石に少し休まないと身体が保たなかった。………治のシナリオ通りですよ」
妹がそう続けると、うふふと笑いながら頭を撫でる太宰。
その動きを数回行い終わると、手を握る。それが合図だったのか紬がベッドから降りた。
「もう大丈夫なンだろうね?」
「はい。有難うございます」
布団の乱れを正して、笑顔でお礼を云う。
しかし、顔色は未だ白い気がしてならない与謝野は顔をしかめた。
「紬、お腹空いた。食べて帰る?」
そんな心配をよそに太宰が歩き出したためそれに続いていく紬。
「そうだね。今日は作る気分じゃない」
そう答えると、
「!」
与謝野に笑顔を送ってから退室していったのだった。
パタンッ
「そう云うことか」
閉まった扉を見ながら与謝野もフッと笑った。
『月のモノが予定より一週間ほど遅れて』
此処に来たときに紬が言った言葉。
始まったのか、未だこないのか。
確かにあの時、紬はハッキリと告げなかった。
故に、話の流れで勝手に後者だと思い込んでいたが。
未だ優れたようには見えなかった顔色から推測すると、正解は前者だったのだろう。
太宰の知る由でないとするならば、おそらく医務室を訪れる前に始まったか。
「上手なのは兄と妹、どっちなんだか」
やれやれと云いながら、紬の寝ていたベッドの隣へ向かう。
「アンタはどっちだと思う?」
仕切りになっているカーテンをくぐりながら其処に寝ていた人物に話しかける。
「兄妹…毎晩行為に及んで……妊娠……」
が、その人物は石の如く固まっていた。