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【文スト】対黒

第20章 若し今日この荷物を降ろして善いのなら


「何でそんなに機嫌が悪いの?」

「私の機嫌が?真逆」

「自覚無いの?」

「無いよ?全く。機嫌など悪く無いからね」

兄の言葉を一蹴すると立ち上がる。


ドォォン!


「ほら。堕ちてきたよ?行かなくていいのかい?」

「………。」

大きな爆音を聴いてから動き始める紬の手をとる太宰。

「何?」

「手ぐらい繋いでてもいいでしょ」

そう云うと歩き出す。


「織田作のマッチ……未だ持ってたのかい?」

「形見だからね」

「そう」

「それが不機嫌の理由?」

「機嫌が悪いつもりはないよ。治の勘違いさ」

「私が紬の事で間違う訳無いだろう?」

「しかし、私が治に嘘をつく訳無いだろう?」

「「………。」」

お互いに結論が出ない。
そのまま海沿いに並ぶ倉庫街に入る。

「!」

見知った人物が紬の視界に入り、反応する。

太宰は知っていたのか、反応も薄ければ歩みも止めなかった。

「仲直りは……出来たようだな」

「「社長」」


話し掛けてきた人物、福沢に応じる。


「抑も喧嘩などしてないのですが」

「そうか?太宰が紬を探すといい慌てて出ていったが」

「……。」

云われて兄を見る紬。


「勘違いならそれでいいよ」

「……。」

手を離して頭を撫でると社長の方へ歩いていく太宰。紬もそれに数歩遅れて続いた。


敦の姿をとらえ太宰は先に進んでいく。


「紬」

「何です?」

その姿を見送りながら福沢に応じる。

「ポートマフィアとの密会時、お前は自分の立ち位置について『どうでもいい』と云っていたな」

「ああ…云いましたね、そういえば」

「マフィアに戻る気があるのか?」

「……。」

真剣な眼差しを向けられる。

紬は目を背けはしなかったが、考えるように目を伏せた。

「無いですよ」

「それはお前の意志か?」

「いいえ」

ハッキリと告げる。

「私は今まで生きてきた中で自分の意志で行動した事など二度しかありません」

「兄任せにすることを止める気は」

「無いです。何か困ります?」

「お前は困らないのか?」

「……。」


質問を質問で返され言葉に詰まる。


「最近になって治と噛み合わなくなってきている事は解っているんですよ」

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