第18章 双つの黒
目の前の脅威に怯えて俯きながら眼だけ中也の方を向く太宰。
「……それはやめてくんないかな?」
「ああ……そうしてやる……久しぶりに生命の危機を感じてるからな」
「私もだよ……」
こそこそと小声で会話する二人。
「反省したかい?」
「「勿論です」」
「そ。ま、判れば良いよ」
揃って謝るのを見ると息を吐いて何時も通りの紬に戻った。
小屋から中也が1歩出る。それを見計らっていたのか
パシュッ
「!?」
首筋に何かが絡み付く。
「さっきから妙に……肩が凝る……働きすぎか……?」
「「!?」」
異形をしたラヴクラフトの姿を捉える。
「ぬおあァッ!?」
その絡み付いた何かを利用して盛大に投げ飛ばされる中也。
「紬はQを」
「了解」
そう云うと太宰は中也の元へ駆け寄る。
「チッ」
中也は小屋の瓦礫から這い出てくる。
「むぅ。流石 組合の異能者。驚異的な頑丈さだ」
「踏むな!」
「またあんなことして……」
そんな中也の頭部を右足で踏みつけながら考察する太宰と、そんなやり取りをQの傍で観ている紬。
「来るぞ如何する?」
「ふっ如何するも何も私の異能無効化ならあんな攻撃小指の先で撃退」
自信満々に云ってのける太宰をラヴクラフトの『何か』が叩きつけ、そのまま中也に攻撃を仕掛ける。
「治!」
「太宰ィ!?」
中也が触手のような「何か」を殴り飛ばし、太宰の元に駆け寄る。
「重い……拳……」
ラヴクラフトにも異変が生じている。
「おい太宰!」
「うふ……うふふふふ」
「気持ち悪ィな。打ち所が悪かったか?」
ゆっくりと立ち上がり、ケホッと咳き込む。
「!」
口から吐いているのは血だ。
その光景を見て紬はQを隠す。
「手前……深手じゃねぇか」
「あの触手……実に不思議だ。異能無効化が通じない」
「莫迦な。有り得るのか?」
「私の無効化に例外はないよ。可能性は1つしかない。あれは異能じゃないんだ」
「はァ……!?」
太宰の言葉に異形でしかないラヴクラフトの方をまじまじと観る中也。