第18章 双つの黒
「そうかい……じゃ 遠慮なく」
そう言うと木の根をナイフで削ぎ始める。
「ふん……甘え奴だ。そう云う偽善臭え処も反吐が出るぜ」
「Qが生きてマフィアに居る限り万一の安全装置である私の異能も必要だろ?マフィアは私を殺せなくなる。合理的判断だよ」
「……どうだか」
呆れながら云って、隣に話を振る。
「手前ならどうしてた?」
「治に訊ねるから同じ結果になっているさ。私に精神操作は効かないし、治に影響が無いならどうでもいい」
「手前の兄依存も大概だな」
「今更だよ」
ふふっ。と笑って太宰の傍による紬。
手伝うつもりらしい。
「マフィアが彼を殺すのは勝手だけどね。大損害を受けたマフィアと違って探偵社は国木田君が恥ずかしい台詞を連呼しただけで済んだから」
回想しながら笑っている太宰兄妹。
「社員に詛いが発動したのか。その後如何した」
「「勿論、録画したけど?」」
嫌がらせをするときのように意気揚々と答える双子。
探偵社にも太宰達で苦労してる奴が居るな……
中也は会ったこともない国木田に同情した。
「おいクソ太宰。その人形寄越せ」
「駄ー目。万一に備えて私が預からせて貰うよ」
大樹からQを剥ぎ取って中也が担ぎ、運ぶ。
そして、呪いの発動源である人形を太宰が抱えていた。
「ああ、糞。昔から手前は俺の指示を露程にも聞きゃしねぇ。この包帯の付属品が」
「何だって?中也みたいな帽子置き場に云われたくないね」
「やれやれ。また始まった」
「この貧弱野郎!」
「ちびっこマフィア」
「社会不適合者!」
「その程度の悪口じゃそよ風にしか感じないね」
「ぐっ……」
本当に何とも思ってないのか余裕の表情を浮かべる太宰に言葉が詰まる中也。
「二人ともその辺に……」
「手前が泣かせた女全員に今の住所伝えるぞ」
「ふん そんなこと……」
ピキッ
「「!」」
ゾワッ
突然、現れた殺気。
その殺気は敵のモノでは無い。
「へえ…それは随分な嫌がらせをしてくれるようだね?中也」
「いやっ……今のは太宰が悪ィだろ…!?」
「その女たちの後始末をするのが誰だか判っているんだろうね?治」
「いやっ……紬に迷惑を掛ける積もりは一切無いよ!?」
その場に正座して言い訳をし始めた。