第12章 The strategy of conflict
「え。今まで本気じゃ無かッたのかい?」
「ははは。真逆!本気に決まってますよ」
紬は与謝野のツッコミにケラケラ笑って答える。
「このままだと無限ループに入るので私も少し異能で対抗しようと思って」
「!」
紬の異能!?
初めて見る与謝野は大きく反応する。隣の賢治はおーと歓声を上げた。
「手前ェ…真逆」
「その真逆だよ」
ニッコリ笑うと目を閉じる紬
『私は終わりを望む。故に、求めるは始ま――』
「わー!待てっ!止めろっ!!」
中也がナイフを捨てて慌てて紬の口を両手で塞ぐ。
「…降参する?」
「するから『終焉ヲ望ム始マリノ歌』は使うんじゃねえよ!散々な目に遭うのが目に浮かぶっ!」
「「?」」
中也の慌てようにポカンとする二人。
「ふふっ。最初から大人しく伝言人だけやってれば善かったのにねぇ」
「後悔してるっつーの……」
元々、手前ェと殺り合う積もりで気たわけじゃねーんだよとぼやいている中也を笑い飛ばして与謝野達の傍に戻る。
「答えよ、ポートマフィアの特使。」
「!」
今までのやり取りを黙って観ていただろう福沢が、カメラ越しに呼び掛ける。
中也の視線がカメラに移った。
『貴兄らの提案は了知した。確かに探偵社が組合の精鋭を挫けば貴兄らは労せずして敵の力を殺げる。三社鼎立の現場なれば、あわよくば探偵社と組合の共倒れを狙う策も筋が通る』
中也がカメラに歩み寄り
「だがお宅にも損はない、だろ?」
ニッコリ笑って告げる。
『この話が本当にそれだけならばな』
「……」
『探偵社が目先の獲物に喜んで噛み付く野良犬だと思うのか?敵に情報を与え操るは高等戦術だ。この様な本理の粗い策で我等を操れると考えるならマフィアなど戦争する価値も無い』
「……敵の頭目から直々に挑発を賜るとは光栄だな」
福沢の言葉に中也が応えている間に、福沢が乱歩に指示を出す。
やれやれとぼやきながら取り出すは眼鏡。
『何を隠している?』
「何も」
『この件の裏でマフィアはどう動く?』
福沢の質問に
「動くまでもねえよ」
中也は怪しく笑いながら答えた。
「……そういうことか」
「え?何だい?」
その返答を聴いて紬が呟く。
『やあ素敵帽子君。組合の御機嫌二人組に情報を渡したのは君かい?』