第12章 The strategy of conflict
「社長が旧晩香堂に入ってきた時に微弱ですが何かの電子反応を発していることに気付きました。恐らく、暗殺者と対峙した時にマーキングされていたのでしょう」
『「……。」』
完全に読まれてたか……。
ポートマフィアの首領、森の算段では太宰達は不在の計算だった。
それをいとも容易く覆すとは。
「………。」
「どんな場所であろうと『社長が居る場所』こそが我々、探偵社の拠点ですからね」
「成る程ねェ」
ニッコリ笑って紬が説明する。
「社長が襲撃されたことを治は不在だったから知らなかった。故に、行動を共にするよう言っていたのだよ」
「はっ。相変わらず頭が回るなぁ、オイ」
中也が構えて
「っと!」
蹴りを繰り出した。
それをあっさりと交わして一定の間合いを取り、対峙する紬。
「久々に打ちのめしてやる、掛かってきな」
「中也が私を?冗談だろう?」
そういうと一斉に地面を蹴った。
「紬のやつ、兄貴より強いンじゃないかい?」
「そうですねぇ。太宰さんがあんなに動いてるところ観たこと無いです」
中也と紬、お互い激しく攻防を繰り返す状況を大人しく観戦している与謝野と賢治。
「手前ェの攻撃は軽ィんだよ!」
「そりゃそうだ。私は一応、女だからね」
「こんなんで勝てると思ってんのかよ!」
ドゴッ!
中也の蹴りで壁に綺麗に穴が開く。
「ふふっ。中也の攻撃は呼吸も間合いも完璧に把握している。幾ら重い一撃でも当たらなければ意味がないのだよ?」
チッと舌打ちして
「だったらこれはどうだよ!」
直ぐに地面を蹴り、紬に向かう。
「「!?」」
疾い!
与謝野達が焦って紬を見やる。
しかし、
「どうでもないよ。私を治と勘違いしてるんじゃないかい?中也」
「!」
紬は一歩も動かない。
中也は飛び掛かるのを止めた。
「「?」」
ボカンとする二人。
「なんだ。止めるの?」
「手前が『終焉想歌』使う気だからだろうが!」
中也が怒鳴り散らす。
「あら、バレてた?残念」
ふふふと笑ってそれを交わす。
盛大に舌打ちして取り出すはナイフ。
「おー。ヤル気だねえ」
「うるせぇ!」
中也が構える。
「仕方無い。私も少々本気を出すとしよう」