第12章 The strategy of conflict
蹴りの態勢に入ったことに気づき、両腕でガードの姿勢をとる賢治だが後方に勢いよく飛ばされる。
賢治を蹴り飛ばして着地した瞬間、背後から迫る殺気に気付く敵兵。
「!」
与謝野の鉈攻撃をアッサリと交わすと、そのまま天井に足を着けて、立った。
重力に反して逆さに立つ光景に何かを思い出し、与謝野が話しかける。
「その異能……『重力遣い』の中原中也だね。」
「ち……太宰の兵六玉が喋ったか。」
舌打ちした割にはあまり動じもしない中也。
与謝野が降りてくるよう地面でギャーギャー云っているのをよそに身嗜みを整える。
その中也に蹴り飛ばされて壁に埋め込まれた賢治はと云うと―――
『逆さに立っているのに帽子が落ちてこない……やっぱり都会って凄い!』
的外れな事を思いながらキラキラした眼差しを中也で眺めていた。
「太宰が其程、警戒してんなら期待に応えねえとなァ」
「!」
与謝野が其の言葉に反応して中也と間合いをとる。
ドゴオッ!
着地した中也の方から轟音が発せられ、見れば中也を中心として足元に亀裂が入っている。
「さァ。『重力』と戦いてえのは何方だ?」
その光景を驚愕した表情で見る与謝野。
そんな時だった。
「大丈夫かい?賢治君」
「あ、有難うございます」
そう云って差し伸べられた手を取る賢治。
「……何で手前ェが此処に居んだよ」
チッと盛大に舌打ちをしながら賢治に手を貸す人物を見る。
「何でって……治が探偵社員なら私も探偵社員に決まっているだろう?」
首を傾げながらにこやかに紬は答える。
「そんなことを訊いてるんじゃねぇよ。手前は太宰と動いてる予定だった」
とぼけんなと苛立つ中也を矢張り笑いながら見ている紬。
「ふふっ。社長の殺しの外注をしたのはポートマフィアだったのだろう?」
『「!?」』
紬の言葉に探偵社員達は驚くも
「………。」
中也は無言になるだけだった。
「だが君達の目的は社長の暗殺ではない。失敗に終わることが判っていただろうから。そうなると目的は別にあると推測できる」
「何だい?その目的って……」
「拠点の割り出しですよ」
「!」
そう言うと懐から小型のトランシーバーのようなものを出す。其れには今居る場所から少しズレた位置に光の点が1つ。