第12章 The strategy of conflict
そんな緊迫した雰囲気の探偵社側とは正反対で、鼻唄混じりの上機嫌で歩みを進める敵兵。
「!」
その進行方向から物音が聞こえ、反応する。
自分の通行を妨げる人影が二人だと判ると溜め息を付いてみせる。
「たった二人か。見縊られた話だぜ」
「探偵社は事前予約制でねェ。対応が不満なら余所を中りな」
「マフィアが敵拠点で暴れるのに予約が要ると思うか?」
「はい!要らないと思います!」
敵兵の発言に、場にそぐわない程の明るい声で賢治が返事をする。
「賢治の云う通りだよ。暴れたいなら好きにしな。けどアンタは暴れに来たんじゃない、だろ?」
「ほう。何故そう思う?」
「ウチは探偵だよ。訪客の目的位、一目で見抜けなくてどうするンだい。」
「お宅の社長は?」
敵兵に問われ、壁際を指す与謝野。
「そこだよ。」
その指先に在るのは監視カメラ。
敵兵は何も疑わずにその方向に歩み寄り、懐から一枚の写真を取り出すとカメラに向かってそれを見せた。
「うちの首領からお宅等に贈品だ。」
その写真に映っているいるのは二人の男性。
『此は……組合の団員?』
「奴等を『餌』で釣った。現れる場所と時間も此処に書いてある。煮るなり焼くなりご自由にどうぞ」
『……何?』
「こんな好機、滅多に無えだろ?憎っくき組合に一泡吹かせてやれよ。」
カメラ越しで敵兵と会話する福沢は考える。
確かに組合の異能者を待伏せる好機は珠玉……
しかし、すんなりと納得行く話では無い。
そのやり取りを黙って聴いていた与謝野達。
「成る程。唆られる案だね。けどもっと善い案があるよ」
与謝野が笑いながらそう云うと、手に持っていた鉈を構える。
「アンタの手足を削ぎ落としてから何を企んでるか吐かせるってのはどうだい」
「そりゃ凄え名案だ。やってみろよ」
与謝野の挑発にアッサリと乗る敵兵。
「賢治!」
「はーい」
与謝野に云われて足元のレールを掴み、引っこ抜く。
普通なら驚く光景だが、逆に楽しそうな顔を浮かべる敵兵。
「矢っ張り伝言人は性に合わねえ。仕事はこうじゃねえとなァ」
敵兵が好戦的な顔をすると同時に賢治が手に持っていた金属…レールだったものを振り回した。