第1章 再会
社長は国木田に紬を事務室に連れて、説明をするように指示を出す。
その指示を受けて、二人は退室した後。
「調査員にはなりたくないようであったな。」
「そうですねぇ。片割れと云えど女性なので、荒事はあまり好きではないのですよ。」
太宰は苦笑して答える。
「国木田に入社試験を任せる。」
「はい。」
それを聞くと太宰も退室すべく部屋の扉に手を掛ける。
「太宰。」
「何でしょう?」
呼び掛けられ、身体ごと社長の方に戻す。
「やっと見付かったのだ。また出ていくことが無いように今日中に仲違いを解決しておけ。」
社長の言葉に苦笑する太宰。
「努力します。」
そう告げて、部屋を後にした。
―――
日も沈み、辺りは静寂と闇が支配する時間。
「太宰。明日の出勤時間は?」
国木田は紬に問う。
「治と一緒に出勤する時間がそれになるね。」
覚える気はないらしい。
「太宰……。」
呆れて兄の方を見る。
「何?心配してるの?安心し給え。私も可愛い妹の初出勤に泥を塗るような真似はしないとも。」
「いやー頼もしい兄を持って私は幸福者だ。」
「そうだろう?」
えっへんと胸を張って答える太宰と、煽て上手な妹。
その様子を見て、はあー。と盛大に溜め息をつきながら頭を抱える国木田。
「悩みの種が増えた。」
「ははは。」
国木田のぼやきに谷崎が苦笑する。
「では、私達はそろそろ失礼するよ。」
「明日から宜しくお願いします、先輩方。」
国木田の悩みの種が探偵事務所から去っていった。
「あんなに息もピッタリで仲も良さそうなのに四年も音信不通だッたなんて信じられませんね。」
「全くだ。然し、太宰のあの反応は間違いなく久し振りだったのだろう。アイツがあんなに取り乱した姿など、俺は見たことない。」
「ボクもです。」
二人の去った扉を向いたまま会話する国木田と谷崎。
「入社試験を任されたが一体どうしたものか……。」
「大変ですね。なにか手伝いが必要なら云ッて下さい。」
「ああ。」
明日からの事を想像しながら二人も事務所を後にした。