第11章 三社鼎立
「マフィアの掟を忘れたかえ、坊主?江戸雀は最初に死ぬ」
ハッと鼻で笑って答え、顔を背ける紅葉。
想像はついていたであろうが溜め息をついた太宰は
「姐さんの部下に拷問専門の班が在ったよね」
扉の方へ歩いていく。
「でも偶にその班でも口を割らせない鉄腸漢が現れる事もあった。そんな時は私か紬が助太刀したよね」
「私達が訊いても口を閉ざした儘の捕虜が一人でも居たっけ?」
太宰が静かに告げたのと同時に紬は立ち上がり、入り口の方へ歩いていく。
「「………。」」
扉の前で2秒ほど何も云わずに見つめあった後、紬も退室していった。
太宰は妖しく笑うと扉の鍵を掛けた。
その顔に恐怖を抱いたのか紅葉の顔は青い。
「此処からは大人の時間だね」
太宰は腕を鳴らしながら愉しそうに告げた。
―――
事務所に戻ると何時も通りの光景を目にする紬。
敦が慌ただしく荷物を片付け、国木田が電話の対応をしている。
「次は何のように」
指示を仰いでいる様な会話を耳にし、国木田の電話相手が社長であるのだろうと目星をつけて机に座る。
「紬さん……あれ?太宰さんは」
「まだ姐さんと話してるよ」
敦が紬に気付いて近寄ってくる。
「一緒に居なくても?」
「私があの場に居たら………」
「居たら……?」
敦が問う。
………。
紬はニッコリ笑って国木田の方に視線を移した。
何だったんだろう…
敦の背中に悪寒が走った。
深く聞くことを止めて荷物を運ぶ。
「社長?社長!」
国木田が声の音量を上げたのはこのタイミングだった。
「如何したんです?」
「社長との通話が……敵襲か?」
「え!?なら疾く救援に」
国木田の返答に敦が慌てる。
「………。」
国木田が「何いってるんだ?」と云わんばかりの目を敦に寄越す。
そして立ち上がると敦の傍によった。
「俺の手首を掴んでみろ」
「へ?」
持っていた荷物を降ろし、国木田の方をみる。
「直ぐに判る」
敦が言われるが儘に手首を国木田の掴むと
「!」
「へえー」
「武道の師匠から最初に教わった技だ」
敦が一回転し、着地した。紬も感心した様子で観ている。
「達人ともなれば凡百体勢から相手を投げ飛ばせる」