第11章 三社鼎立
ふと意識が浮上する。
はて?
此処は何処じゃったか。
確か――………
思考が結論を出す前に、視界に入る人物。
「やあ姐さん、ご無沙汰」
爽やかに挨拶したのは太宰。
兄の方だ。
「……この程度の縛めで私を紮げられると思うたか。」
姐さん……こと、尾崎紅葉は横になった状態で拘束されている。
「真逆。だから私達が見張りに」
今度はニッコリ笑いながら妹の方が答えた。
「確かに久しいのう、裏切者達よ。組織の誰もが其方共の首を狙っておるぞ」
「「ははっ。行列に並ぶよう云わないと」」
軽いノリで話す太宰とは正反対に、二人のやり取りを壁に寄り掛かりながら険しい顔をして聞いているもう一人の探偵社社員、敦。
その敦の方を見る。
「……童。鏡花は無事かえ」
「彼女は……行方知れずだ」
その質問に律儀に返答し、
「貴女の所為だ」
すごい剣幕で紅葉に云い放つ。
「くく……くくく。くくく……」
敦の返答に笑い出す紅葉。
その行為が敦の逆鱗に触れた
「何が可笑しい!」
敦の怒りに呼応する様に、振り上げた腕が虎のモノに変化した。
今にも襲わんばかりの敦の右腕を紬と太宰が同時に掴む。
「!」
虎化した腕が元に戻った。
「彼女は私達に任せ給え。君は外に」
片手をヒラリとして敦に告げる兄、治。
「太宰さん!」
「善いから」
ニッコリ笑いながら抗議しようとした敦の肩を掴んで進行方向を紅葉から入り口扉の方に変える妹、紬。
敦は部屋の方をもう一度だけみると
バタンッ
大人しく退室していった。
「にしても………戻ってきておったのか、紬」
「矢張り兄なしでは堪えられなくてね」
「其方は相変わらずじゃの」
「ふふっ」
「何処におったのじゃ」
「私達の存在が消えてるかどうかの確認に出歩いた以外はこの界隈に」
「!」
紅葉がピクリと反応する。
紬の回答を聞き終わると太宰が頭を撫でる。
それが合図だったのか。紬が椅子に腰かけた。
「却説、早速で悪いけれど開戦までもう間がない。そして捕虜には大事な仕事が在るよね?マフィアの戦況、今後の作戦を教えて貰おうかな。」
太宰が本題に触れた。