第10章 連続爆破事件
犯人候補を聞いた瞬間に、自分が狙われることが直ぐに判ってた太宰。
これを利用するしか無いか――。
紬が必ず動くために必要なもの
それは「復讐心を煽ること」
嫌なことをされれば、敵味方問わずに遣り返す。
その理念は互いに同一のもの。
太宰であろうと紬であろうと
遣られたら10倍返しが基本だ。
しかし
片割れが第三者に傷付けられた場合、
相手が絶望するほどの恐怖を植え付けにいく暗黙のルールが二人の間には存在する。
この件に至っては「始末」という結末で終える可能性が非常に高い――。
故に、問題は「始末」に至る前に止められるか、ということ。
しかし、探偵社にはそれを絶対に阻止するだろう人物が存在している。
その内の一人、国木田が共に居る筈だから大丈夫だろう。
ここまで検討して自ら撃たれる事にしたのだ。
「久しぶりに治を殺したくなった」
紬の頭の下に自分の腕を滑り込ませ
「ふふ。喜ぶだけだと判って止めたのだろう?血まで分け与えて」
「………治なんか嫌いだ……」
「酷いことを云うね紬は」
もう一方の手を腰に回す。
「今度からはお願いしようかな…紬に手伝ってって」
抱き締めながらそういうと顔を太宰の胸に埋めて隠す。
「気が向かなければ動かないし、動く気にもならない」
先程、善い返事をしなかった為ヘソを曲げているようだ。
「そう」
その顔を無理やり自分の方に向かせ
「っ!」
強引に口を塞ぐ。
「………何で治が優勢なの?」
「中也と寝たんでしょ?全部を差し引いても紬の方が分が悪い」
今後も、話し合いの解決をする気がないと云うならば―――。
「まだ云うのかい?自分はそこそこ可愛い看護師引っ掛けてたくせに」
「じゃあこれからは紬以外とはシないよ」
「いや、それはいい。私の身体が保たない」
「じゃあ選び給えよ」
「何を」
「今後は私の云うことを凡て聞くか、今日みたいな事になって私に犯されるか」
「治が良い思いする選択肢ばかりではないか。納得いかっ……!ちょっ……まっ……!」
類稀なる兄妹喧嘩はまだ終わりそうに無かった――。