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【文スト】対黒

第10章 連続爆破事件


―――

夜も寝静まるほどの時間――。

「来るのが遅いよ」

「どうせ看護師にデレデレしていたのだろう?」

入室してきた人物に声を掛ける。
面会時間など、とうに過ぎている時間帯だが
人目を盗んで此処まで来ることなど紬にとっては朝飯前だろう。


現に、太宰を連れ出したのですら見付かっていないのだから――。


椅子に座ってベッドに頭を預けると、直ぐに頭を撫でる太宰。

「中也のところに居た」

ピタリとその手が止まる。

「寝たの?」

「さあ?」

答える気はないらしい。

何時もなら乱暴に問い質すのだが、今の太宰にはそれは出来なかった。

「幾らナオミちゃんを庇ったからってそんなに怒ること無いだろう?」

「怒ってなんか無いさ」

誘拐と、希望から絶望の縁へ叩き落とされたこと
そして、
その判断のせいで兄がこの世を去るかもしれないという恐怖――

一般人の学生が味わうには十分だっただろう。

「仕返しは済んだ」

「本当に身内でも容赦ないねぇ」

「関係無いからね」

太宰が少しずれる。
それに合わせて紬が太宰の隣に侵入する。

「抑も治が撃たれずとも『手伝って』と言ってさえくれれば動いたのに」

「そう?意識あったなら中也のところになんか行かせなかったけどそれでも?」

「根に持つね」

「当たり前だろう」

紬が太宰の方を向く。

「治が居るなら何処にも行ったりしないのに……」

ポスッと太宰の胸に顔を埋める。

「『治が撃たれれば私が動くのを判ってて』行動した結果じゃないか」

「……。」

その通りだった。

太宰は判っていたのだ。

紬が過去の捜査依頼記録を読んで大方、犯人の目星をつけていたことを。

故に、紬は犯人を押さえる事はしても爆破事件を止めようとはしないということを。

理由は1つ。

全く興味を示さなかったからだ。

しかし、敦との調査で8回目の爆発で使われていた爆弾は、素人がこさえたレベルのものではなかった事が判明した。

それを調べるには堅気ではない自分達の力が必要になる。

そうなると紬のサポートがどうしても必要だった。

しかし、本人は動く気が無い。

では、この事件に興味を向かせるためにはどうしたらいいか。
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