第10章 連続爆破事件
振り返り様に主犯の男に回し蹴りを入れる。
「!?」
ドガッ!
咄嗟の事だったため綺麗に蹴りが入った男は、壁まで盛大にぶっ飛んでいった。
「「!?」」
突然の事で、太宰以外の連中はポカンとしたままだ。
壁にめり込んで地面にずり落ちる。
紬はそんな男に近付くと
ガッ
「ガァッ!」
後頭部を足で踏みつけた。
「治に中々素敵なプレゼントをどうも有難う。」
「!」
その姿から発された声は太宰のものと瓜二つ。
普段よりトーンの低い声から伝わるのは
怒りの感情―――…
「お前が治を撃ちさえしなければ……否、あと数糎外して撃っていれば計画も完遂できた上、死なずに済んだのに」
紬が足に力を込める。
「ぎゃっ……!」
男が短い悲鳴を上げる。
紬さん!?
皆、別人としか思えない紬を見て怯える。
二人を除いて――。
「よせっ!」
国木田が慌てて止めに入ろうとする
「紬、帰ろう。紬の傍でゆっくり休みたい。どうせ一時も傍に居てくれなかったのだろう?」
前に太宰が紬を抱き寄せた。
「当たり前だろう?此れでも忙しかったんだから」
やれやれと息を吐いて兄に返事する紬は、
何時もの調子の紬。
しかし、矢張り体調は優れないのか兄にもたれ掛かるように身体を預けている様だ。
「「…え。」」
「「ん?どうかしたかい?」」
完全に体調以外は何時もの調子の紬だ。
太宰との息もぴったり。
「あ。私が本気でこの男を殺すと思ったのかい?」
「「「………。」」」
「そうです」なんて云えずに固まったままの敦たちと残りの犯人。
「………。」
恐らく一番そう思っていたのは足元に転がってガタガタ震えている男だろう。
「いやー真逆、そんな風に思われるなんて」
「我々は基本、おふざけパートだから。偶にシリアスパートを演じるとギャップが凄いのだろうね」
「成る程。そのギャップを許容出来ない人の前でシリアスになっても受け入れてもらえない感じなのか。反省して今後に活かそう」
相も変わらず意気投合しながら話す二人。
こうして事件は幕を閉じた―――。