第10章 連続爆破事件
―――
「『蒼の使徒』――正に僕の理想像だよ」
「!」
『蒼の使徒』だと――!?
そうか。
電網破りの力を借りて過去の捜査ファイルを盗み見たな!
あの時は飛行機の操縦を奪っていたが、今回は爆弾……。
『蒼の使徒事件』を一気に濃縮した様なものだと悟る。
電網破りの女は『ストーカー』だった。
選りに選って探偵社に勤務する、家庭持ちの事務員の男性を狙ったのだ。
勿論、男性が相談した数時間後に逮捕された。
そして国木田はその隣に立つ男にも目をやる。
あの男は確か―――
包丁を人に向けるのですら出来ない程の気弱な人間なのに、金欲しさから幼稚園に立て籠った男だった事を思い出す。
「……自分を中心に壁を作る異能力だったか?」
「!」
国木田の言葉に男がビクリと反応する。
距離は1000米迄なら好きに操れて、その壁は人も弾丸も異能も通さない無敵の盾だった。
それ故、事件解決は難航していたが……
太宰を前にしてその盾はあっさりと崩壊し、事件は無事に解決し―――
ハッとする国木田。
「だから太宰を始末したのか!」
「ご名答。流石は探偵社。頭良いねぇー」
完全に馬鹿にしている。
そんな時だった。
「う……んっ……」
「!谷崎!?」
ナオミが起きた。
「大丈夫か!?」
国木田が屈んでナオミの肩を掴み、話し掛ける。
「国木田さん?……私一体……」
「誘拐されたんだ……覚えているか?」
「……そうですわ!太宰さんのお見舞いに行く途中に」
ナオミが肩に置かれている国木田の手にそっと触れた。
コツッ
「!」
国木田とナオミが目配せをする。
「ご心配をお掛けしました。大丈夫ですわ」
「そうか……無事で良かった」
そういうと立ち上がり、静かに男二人の方に歩み寄る国木田。
「これだけの被害が出ているにも拘らずお前達は安全な位置で高みの見物か。神様か何かに為った積もりか?」
「惜しいね」
元官僚の男が笑顔で応じる。
その瞬間に国木田は走り出した。
「!」
男が慌てて壁を作ろうとしたのだろうが間に合わなかった。
国木田は直ぐにパネルの鍵穴に、鍵を差し込む。
ピッ、ピッ………ピ。
「!」
画面のカウンターが…止まった。