第10章 連続爆破事件
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傷口が疼いて力が入らないっ!
男に締め上げられるも激しく抵抗をすることが出来ない太宰。
「ああ、そういやーお前が撃たれたんだったな?」
「!」
男はニヤリと笑うと空いている方の手をグーパーし始める。
「うっ……」
漸く気を取り戻す敦。
然し、身体は思うように動かない。
ゆっくりと頭をあげ、現在の状況を確認する。
「!」
今まさに
「今度こそ死ねぇー!」
男が太宰の傷口目掛けて拳を降り下ろした瞬間だった。
「……っ!太宰さ……!」
「誰に向かって死ねなどとほざいているんだい?」
「「!?」」
急に響き渡る女性の声。
そして男の拳は太宰の傷口に到達する前でピタリと止まった。
「?」
敦は何が起こったか全く判らずに目だけを必死に凝らす。
敦の位置から声の主の姿は見えない。
然し、今し方乱入してきた声は間違いなく知り合いのもので。
「苦し………」
「ハイハイ。直ぐに助けますよー」
太宰の呻き声に応じて男の真後ろからひょっこり現れ、何故か動かない男の指を1本1本丁寧に開いていく女性。
ドサッ
「痛っ!傷口に響いた!」
「そうかい。丁度いいや。反省し給え」
「心配してくれてもいいだろう!?」
抱き着こうとする太宰をヒラリと交わして敦の方に近寄る。
「大丈夫かい?敦君」
手を差し伸べる女性の姿に安堵して、手を取った。
「紬さん…」
後ろで太宰が口を尖らせてぶーぶー云っているのですら安心する。
「いやー遅くなって済まないね。一寸、谷崎君の様子を見に行ってたものだから」
「!」
谷崎さんの?
「却説、取り敢えず先を急ごう。向こうにはまだ3人ほど敵が居る筈だからね」
「はいっ」
そういうと兄の左腕を取って乗せる。
「抱擁は?」
「後にして」
「ちぇっ」
そんなやり取りをしている二人は何処か嬉しそうな顔をしていた。
「おい、一寸待て!」
「!」
敦が男の声に素早く反応する。
が
「?」
反対側を向いたまま動く気配が全く無い。
というか、
「敦君、放っておいて構わないよ」
先程からポーズが一切変わっていないのだ。
「えっ」
紬に云われて気になりつつも進行方向に進み出す敦。
「おい!」
男の声は虚しく廊下に響き渡った。