第1章 再会
「殆ど一緒に居ましたから。」
「そう。ならいいんだ。あ、僕はこれから仕事だから失礼するよー。」
ニッコリ笑って退室する乱歩。
……。
「おい太宰、今のは何だ。」
それを黙って見送り、口を開いた国木田。
「知らないよ私に訊かれても。」
「!」
紬の返答で漸く国木田は思い出す。
「……同じだ。」
「へ?」
「以前、太宰が乱歩さんと初対面の時に会話した時の返答と全く同じだ。」
あの時は乱歩さんと、太宰、俺しかいなかった筈だ。
「ふーん。でも、それしか云いようが無いからね。私に至っては、ぶらぶらし過ぎてお金も底を尽きてしまった。」
はははと笑いながら話す紬をジッと見る。
「国木田、社長に終わった旨を報告しなくていいのかい?」
「はっ!?」
与謝野の一言で我に返る。
「社長室に行ってくる。お前は事務室に居ろ。」
「判ったー。」
紬は笑顔で手を振って国木田を見送った。
―――
「おや?珍しい光景だねえ。」
事務室に戻ると、珍しく太宰が机に向かっている姿を目に捉える。
「え?」
「国木田に怒鳴られずに机に向かってるなんて」
明日は大雪かも知れないよ、等と笑う与謝野。
「ああ。治の事ですね。」
誰の事を告げているのか漸く判った紬は苦笑して話題の根元に近付く。
「あ、終わったかい?」
「うん。」
紬に気付いて顔を上げた太宰に笑顔を返す。
それと同時に「どうぞ」と、谷崎に隣席の椅子を勧められ、遠慮なく座る。
「机、片付けてくれたのだろう?」
「散らかし過ぎなのだよ。少しは整理整頓にも気を遣い給え。」
「ふふっ。努力はするよ。」
そんな二人にお茶を運ぶ谷崎妹。
有難う、と受け取ると早速飲み始める。
「太宰さん。」
「「何だい?」」
あっ。
二人が同時に反応したため、少し慌てる。
が、質問したかったことは二人の事。
「何で机を片付けたのが紬さんって判ったんです?」
「何時もの事だったから。」
「え?」
「治は基本的な家事全般が苦手なのだよ。」
太宰の答えに紬が補足する。
暫く日常会話を続けた後、ナオミが告げた。
「本当に仲がよろしいんですね。」
その言葉に顔を見合わせる太宰兄妹。