第1章 クラスメイトの千石くん
思い切って運営委員になって良かった。
廊下を一緒に歩くと、千石くんはいろいろな人に話しかけられる。
男子女子、後輩も。千石くんはへらへらと笑顔を返しているけど、人徳だよなぁ…。
人気者だよなぁ…。
「千石せんぱーい!」
ぱたぱたと可愛い子が廊下をかけてくる。着ているジャージがぶかぶかだ。目がぱっちりしていて、小柄で可愛らしい。
「千石先輩、今日、放課後亜久津先輩とケーキ屋さんに行くんですけど、千石先輩も行きませんか?」
「あはは、モンブランでも食べに行くのかい?」
千石くんが笑う。テニス部の後輩かな?見たことあるような、ないような。
「なんで分かるですか?」
「だって亜久津、モンブラン好きじゃん」
「はいです!千石先輩は忙しいですか?」
「うーん、忙しくはないんだけど、今日は先約があるからやめておくよ」
肩を落とす後輩ちゃん。なんだかかわいそう。
「そうでしたか、じゃあまた今度お誘いしますね!」
「あの、私なら、いつでも良いから、行ってきたら?」
後輩ちゃんが不思議そうな顔をする。
「だめだよ!俺が誘ったんだし、ちゃんは気にしないで!」
「千石先輩、彼女さんですか?」
小首を傾げ、後輩ちゃんはさらに可愛く見える。
「いえ、クラスメイトです」
千石くんに迷惑がかかるのは避けたいのでハッキリ言うと、後輩ちゃんは私に微笑んだ。可愛い。
「そうでしたか、失礼しました、じゃあ千石先輩、また」
来た時と同様ぱたぱたと後輩ちゃんは走って行った。
「千石くん…良かったの?えっと、後輩ちゃん?」
「ああ、テニス部のマネージャーだよ」
「そうなんだ、良かったの?」
「まあ、男とケーキ屋行っても、楽しくないからね」
千石くんがぺろっと舌を出しておどけてみせる。
亜久津くん、ケーキとか食べるのか…さっきの子はただのマネージャー?亜久津くんの彼女?
どっちにしても、あの可愛い子はテニス部のマネージャーか。
見かけたことあったわけだ。
「マネージャーさん、可愛い子だね」
「うん?まぁ、よく可愛いって言われてるね。本人は気にしてるみたいだけど」
「ふぅん?」
目立つのが嫌とか?
「まぁ良いじゃん!早く委員会で報告してデート行こう」
デート、という単語にどきりとする。