第1章 クラスメイトの千石くん
紙に黒板の内容を写し終わると、委員会までの時間が余ってしまった。
「時間、余っちゃったね」
「うん、ちゃんは部活は?」
「今日は部活ないの、千石くんは部活大丈夫?」
「うん、俺も今日は部活ないんだ」
「そっか、お互い、オフだね」
「うん、ラッキー♪ちゃん、帰り道デートしない?」
「ふぇ!?」
咄嗟で変な声が出る。
「あはは、どうかな」
「デートって…千石くん、帰り道一緒だから、一緒に帰るなら途中まで一緒じゃん」
「そうだけど、どっか寄ってかない?、っていう、お誘いのつもりなんだけど」
「え…?えーと、うん、いいよ」
千石くんがガッツポーズを作って、もう一度ラッキー♪と言った。
「姫、これ、職員室持ってってもらって良いかな?」
「あ、うん、いいよ」
後ろからクラスメイトに話しかけられ、出席簿を受け取った。
「職員室に何か用あるの?」
クラスメイトが去ったあと、千石くんが不思議そうな顔をする。
「ううん、別にないよ」
「なんで引き受けたの?」
「さあ?何か職員室に行ってそうなイメージだったのかも」
冗談めかして答えたけど、千石くんは不満そうな顔をした。
「おーい、○○さん、これ、日直だろー?さん、今から俺と委員会行くから、自分で持ってってもらって良いかなぁ?」
クラスメイトは驚いて千石くんを見たけど、「あ、そうだったんだ、ごめんね、おっけー」と笑顔を見せた。
掃除も終わって教室から人が減っていく。
「ちゃんって、本当に断れないんだねぇ」
「うーん、そういうつもりもないんだけど、私がやっちゃえば早く済むし良いやって思うことはあるかも…いたっ」」
デコピンが飛んできた。
驚いておでこを抑えながら千石くんを見ると、千石くんがあはは、と笑った。
「ちゃんは、もっと肩の力を抜かないと、窒息しちゃうよ」
「…う」
私は簡単に壁を飛び越えちゃう千石くんが心底羨ましいよ。
みんなでわいわいとか、ちょっと憧れる。