第4章 好き
好きって言われたの、なんだか嘘みたい。
「千石くんは、近所に住んでいるのかい?」
「あ、はい、歩いて5分くらいです」
「そうか、いつでも来てくれて良いからね。男の子がいれば僕も安心だから」
「何言ってんの!」
「あは、ちゃん、顔真っ赤」
「だ、だって、ごめんね、うちの馬鹿親が…」
「大丈夫、危ない目になんて遭わせないよ。俺も部活あるし、部活の日も、そうじゃない日も、一緒に帰ろうね」
ストレートな言葉。
真っ直ぐな瞳。
揺れるオレンジの髪。
なんで、私を好きなんていうんだろう。
「引き留めてすまなかったね、良かったらゆっくりしていってくれ」
「いえ、お言葉にあまえて少しゆっくりさせていただきます」
千石くん、ずいぶん落ち着いてるなぁ。
お父さんは立ち上がり部屋へ行ってしまった。
少し沈黙が落ちる。
「「あの」」
「あ、ごめん、千石くんからどうぞ」
「ううん、ちゃんからどうぞ」
千石くんが笑う。
「えっと、私の部屋行く?」
「ああ、良いの?」
「うん、2階なの、行こう」
新しい紅茶のポットとカップ、クッキーをトレイに乗せると「ー!」とお父さんの声がした。
「なぁにー」
「何してもいいけど、避妊はちゃんとしろよー」
「なっ…セクハラ親父!!明日のお弁当おかずなしにするからね!!」
「はっはっは」
笑い声がむかつく。
思わず叫び返すと千石くんが声を殺して笑っていた。
顔から火が出そう。
「ごめんね、馬鹿親父で…」
「面白いお父さんだね」
最低、さっき似てるって言ったの、撤回。