第4章 好き
家の前で早く帰ったお父さんと遭遇してしまって、慌てる私に千石くんはウインクをしてしっかり頭を下げた。
「今日からさんとお付き合いさせていただいている千石です」
お父さんが驚きながらも笑う。
「…初めまして、の父です」
千石くんが頭を上げるとお父さんがにこにこしていた。
そして、安心したように小さく息を吐く千石くんにお父さんが上からチョップをかました。
「いてっ」
「お、お父さん?」
「ははは、娘の彼氏にチョップしてみたかったんだよね」
大した威力ではなかったらしく千石くんはへらっと笑った。
「はは、光栄です」
「寄ってくかい?」
千石くんが私に振り返った。
「どちらでも」
「じゃあ、少しだけ、お邪魔していいですか?」
「ゆっくりどうぞ」
お父さんが扉をあける。
「お邪魔します」
千石くんはきちんと挨拶をして玄関に入った。私も続く。
「、お茶入れてくれるか」
「はーい、良いですよ~」
台所に入りお湯を沸かすとリビングにお父さんと千石くんが入ってきた。なんか不思議な感じ、
「千石くん何が好き?」
「うん?」
「緑茶、ウーロン茶、オレンジジュース、林檎ジュース、牛乳、紅茶、コーヒー」
「すごいなぁ、じゃあ、温かい紅茶」
「おっけー」
お父さんと千石くんがソファに座るのを見て、また不思議な気持ちになる。
「うちは妻が身体が弱くてね、入院しているんだ」
千石くんがびくりとした。
「そう、なんですか」
少し申し訳なさそうな顔をしている。
お父さんは穏やかに続けた。
「今度、是非会いに行ってやってくれないか」
「はい、ぜひ」
緊張した顔はすぐに笑顔に変わる。
こんな風にどこでも自分らしさを出せたらいいのになぁ。
「も、キミくらい人見知りしなければ安心なんだけどね」
「お父さんっ」
「ふふっ」
千石くんが笑う。ひまわりみたい。明るい空気。
「これからは、僕が一緒にいますから、きっと直りますよ」
「ふむ、よろしく頼むよ」
二人は和やかに笑うけど、私はなんだか恥ずかしい。っていうか、なんか千石くんとお父さんって、ちょっと似てるかも。
缶クッキーをお皿に盛ってテーブルへ運んだ。
「ありがとう」
にっこりと笑顔で言われ、顔が熱くなる。